ステーキを食べる男

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 ごくり。  十分口腔内で堪能した肉を飲み込む。  耳と目で堪能し、鼻で堪能し、歯と舌で堪能した後は喉で堪能する。  少しばかりの余韻が私を支配する。  余韻に浸るのはいいが、まだ目の前には肉がある。  そう。私はまだ一切れしか食べていないのだから。  堰を切ったかのように私は、ナイフとフォークを使い、肉にかぶりつく。  次から次へと肉を口へ運ぶ。  そして、最後の一切れの喉越しを楽しんだ後、また余韻が支配する。  「ふう。うまかった……」  この場には私一人しか居ないのに、つい口に出てしまった。  こんなにも旨い物を食べた時には、つい感謝をしたくなる。
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