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気づけば私は天井を見ていた。
天井には白熱電球が一つあり、灯りで私を照らす。
体を動かそうとするが力が入らない。
どうやら首だけは動くので辺りを見回すが、周辺の状況などどうでもよくなるほどのものが視界に映った。
私の手足は蹄だった。
腕と足には、白と黒のまだら模様。
そして、乳首が4つあった。
私は牛になっていた。
すると、私の左右から黒い塊に霧がかったモノが現れた。
左は大きく、右は小さい。
両方とも共通していることは、目を嬉しそうに細めていることだった。
左の黒い塊はナイフを取り出し私の腹を裂いた。
痛みは感じなかった。だけど恐怖は感じた。
私は各部位に綺麗に解体された。
その後、2つの黒い塊はフォークを使い、私から取り出された各部位を生のまま食べ始めた。
私は自分のむき出しのアバラ骨と、おいしそうに私を食べる2つの黒い塊をただ見ていることしかできなかった。
そして、右の小さい黒い塊が言う。
「お母さんもうお腹いっぱい」
どうやら左の大きな黒い塊は母で、右の小さい黒い塊はその子供らしい。
母は、子供の言葉を受けて言う。
「この牛さんはね私たちに命をくれたの。残したりしたら牛さんに失礼でしょう? だから綺麗に残さず、この牛さんに感謝しながら食べなさい」
子供は「はーい。ありがとう牛さん」と言って私を残さず食べた。
私はまるでしゃぶりつくされたかのように、綺麗に骨だけになった。
そして私は目を覚ました。
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