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第85話 観光
「どうしてそうなるの……あんた……」
私達はナルノ町で服を買って、今はメイド服から適当に可愛い服になっている。
私はベージュのダブルトレンチコートにマフラーを巻いて数字を隠し、コートのインナーは谷間を強調している物をチョイスした。
私も胸は大きい方なので武器として脱いだらすごいわよって……言う服なんだけど……
「……?」
はぁ……
アオイはその私より大きな胸を全部包み込まれるようにセーターを着ている。
露出なんてしてないのよ?だけどそれが逆に働いてる事ってある?
アオイの胸のサイズがでかすぎてパツパツになっていて歩いてるだけでプヨプヨと揺れ、また目立っている。
これじゃ私が脱いでも絶対アオイの方に目が行くじゃないのよ……
って……そんな事より一つずつ観察よね。
まずはアオイの興味のありそうな物を見逃さず見つける。
とりあえず、服を選んでる時そんな素振りは見せなかったわね。
服は興味なしっと__
「そう言えば、お腹空いたわね?アオイは?」
「......はい」
「お腹すいてる?」
「はい」
「すいてない?」
「......はい」
肯定が遅かった、これはお腹すいてるわね。
「うーん、好きな食べ物とかある?」
「......」
「そうねぇ、じゃぁナポリタンとかどう?」
「はい」
ん、ナポリタンね、把握。
「えーっと、何かないかしら......って何あれクバブ?美味しそうな匂いだけどほとんど油と肉じゃない、あんなの食べたら胃もたれまっしぐらのブクブク太っちゃうわ」
屋台を見たら何かのモンスターの肉をデカデカとアピールしてる所があった......あんなの食べるのっておデブちゃんくらいよね、誰が食べるのやら。
......ん?アオイ今食べたそうにしてた?気のせいよね。
「いらっしゃいませー」
外はニューイヤーフェスティバルだけどこの店は飾ってないので人は少ない。
「綺麗な店ね」
「はい」
案内されたテーブルについてメニューを見るとナポリタンの他にも、期間限定の物もある。
「へぇ、期間限定ねぇ......まぁでも」
色々迷ったけど、やっぱり当初の目的の食べ物を二人分頼むと程なくしてナポリタンが2つ来た。
「いただきます」
「……いただきます」
あら?それは言うのね?反射的かしら?
よく注意してアオイの事を見るといろんな発見があるわね。
「アオイ、こんな豪華な料理奴隷生活で食べれないわよ、良く味わって食べなさいね?」
「はい......」
二人である程度まで食べ進め__
「それにしても、ナポリタンおかしな名前よね、子供の頃お母さんに良く作ってもらったわ、子供の私はこの名前がおかしいって毎回言ってたっけ」
お母さん元気かな......?
......まだ探してくれてるかな?
反抗期の私は荒れていて魔法学校にも行かず遊んでいた。
私が奴隷に落ちた原因は友達と夜遊びしてたときに男に騙されて誘拐された……
失われてこそ日常のありがたさに気付かされるって良く言ったものね、過去の自分が居たら……ぶん殴りたい……
「ほんと......馬鹿ね」
「......大丈夫?」
「え?......あ」
気が付くと涙が少し出ていた、それをアオイが心配してくれたのだ......
…………この子……自分の心すら無くしたのに私を心配してくれたの?…………優しいのね……
「フフッ、なんでもないわよ、さぁさっさと食べる食べる」
「......はい」
「……」
「……」
無言で食べる時間が過ぎていく、うーん、気まずいわね。
「美味しいわね」
「......はい」
「どうやって作るのか知らないけど私は一番この食べ物が好きよ、あなたの好きな食べ物は?」
「............唐揚……」
「からあ……何それ?」
「……」
「アオイ?」
アオイは食べる手を止めた後、静止し突然泣き出した!え!?
「え?なんでよ?私好きな食べ物聞いただけなんだけど!?」
まずい!アオイが泣き出すと周りの人がチラチラ此方を見てる!
この子がめちゃくちゃ可愛いからみんな何事かと話しかけて来そうだ!
な、なんとかしないと!
「え、えと、ほら!この後どこいく?見てみて!あれモンスターコロシアムですって!行きましょ行きましょ」
とりあえずナポリタンを速攻で食べて会計を済ませてアオイの手を引きながら外にでて人の気配が無いところまで連れてきた。
「どうしたのよ?」
私はアオイを木陰のベンチに座らせて事情を聞くが__
「......うぐ......ヒック......」
アオイは溢れる涙を袖で拭きながら泣いていて話せる状況じゃ......あれ?
「な、なんで?わ、私まで......」
私の頬に伝わる涙の感触......気がつくと私も貰い泣きしてしまっていて心の奥底から抑えていた感情が溢れてきた。
「……貰い泣き、しちゃったじゃない」
私はアオイを抱き締めてしばらく二人で泣いた。
____数10分後。
......気まずい、何事もなく装ってるけど、明らかに気まずいわね......
「えーっと、とりあえずスイーツ食べに行くかモンスターコロシアム?って言うの行く?」
「はい」
うーん、どっちだろ、正直私はスイーツ食べたいけどいつでも食べれるし、コロシアムって言うのはフェスティバル中だけみたいだからこっち優先かな?
「とりあえずコロシアムはどうしたら見れるかそこら辺の人に聞いてくるわね?結構人気のイベントみたいだから聞いたらみんな知ってると思うし」
「......はい」
「あんたは少しここにいて?」
「わかりました」
アオイを連れて歩くと目立つのでとりあえずベンチに置いてきて私は人混みの中をキョロキョロする......えーっと声かけやすそうな人は......っと......あ!あいつなんか良さそうね!
私はボーッと突っ立ってる黒い服を着た男に声かけた。
「すいません、私、旅行でミクラルに来たんですけど聞きたい事があって......少し良いですかね?」
コートから胸元をちらつかせながら聞く。
こうすれば男なんていちころよ♪
「......はい」
ちょっとまって、この反応、デジャブ?
胸に全く興味なさそうなんだけど!
「え、えーっと......モンスターコロシアムっての見たいんだけどどうしたらいいの?」
「......コロシアム?あぁ......ちょっと待ってて」
「え?あ、はい」
「……」
「……」
「……」
「……」
え?何?
待てって言われたんだけど……
「….…」
え?なんでこの男微動だにしないの?
「えっと......どれくらい待てば......」
「......来た」
「?」
その男が指差した方向から小さな女の子がパタパタと此方へ向かってきた。
「む、誰ですかこの人は!まさか浮気!?ヒロユキさんはこんなのが趣味なんですか!?」
ムカッなんて失礼な子!親の顔が見てみたいわ!
「違うわよ!失礼ね何この子供?あなたの妹?」
「子供とは失礼な!私は立派な大人です!歳は教えれませんけど!」
「子供が背伸びして大きく見せようとしなくていいのよ、チビ」
「むぅ!ヒロユキさんも何か言ってください!」
「......ユキ、この人もモンスターコロシアムに行きたいらしい」
「「無視!?」」
「ヒロユキさん無視ですか!?」
「あなた......私が言うのもなんだけど今の流れで無視するのはすごいわ......」
「......?」
天然か!まぁいいわ、つまりこの......ちょんちびと話せってことね。
「ま、まぁいいわ、私もモンスターコロシアムを友達と見てみたいんだけど旅行で来てるから色々とわからないのよね、教えてくれない?」
「なんですか!その態度は!」
「態度で言うならアンタ初対面の人を「こんなの」呼ばわりしたのよ?」
「うぐ......確かに不覚でした......モンスターコロシアムを見るにはチケットが必要です、すぐそこのギルドで買えますが、何せ人気目玉イベントなのですぐ売り切れますよ?私はちゃーんと2枚買えましたけどね!ヒロユキさん!どうですか?すごいでしょ?」
「......そう」
ふーん、なるほどね。
まぁ、時間も少しあるし買えたら買えたでラッキーって事で行ってみるかしらね。
「そ、ありがと、じゃぁデート楽しんでね?」
「デデデデデートとかじゃないですし!ね、ヒロユキさん!」
「......うん、そうだよ」
「そこ否定しないんですか!?」
なんやかんや、お似合いのカップルねこの子達。
ワーワー言ってる二人を後にしてギルドに入った。
「いらっしゃいませ、今回はどういったご用件ですか?」
「モンスターコロシアムを見たいんだけど」
「あー……申し訳ありません、そのチケットなら完売しています」
「そ?じゃぁ他に何かある?」
まぁ見れなくても他に何かイベントがあればそれでいいわ。
「ではここにギルドカードをお通しください、今開催されているイベントの予約一覧が表示されます」
個人のギルドカードは持っていないのであらかじめ渡されていた町長のギルドカードを渡す......私のじゃないけどいいのよね?
「あ!申し訳ありません!」
やっぱりダメなのね?と思ったのだが__
「ブールダ様の使いとは知らずお待たせしてしまって申し訳ありません、モンスターコロシアム観戦はいつ頃を予定されていますか?」
ギルド員は深々と私に頭を下げる。
なるほど、町長の権力は本当にすごいみたいね。
「うーん、じゃぁ明日にするわ......明日二人で予約ね」
「かしこまりました、此方で席をご用意させていただきます」
「ありがと、ちなみに今日の何かイベントもあるかしら?」
「はい!全てのイベントに途中参加も可能ですよ!」
「あらあら♪」
私はそのままアオイを迎えに行き、その日は観光イベントを楽しみまくった!(主に私が!)
んー!自由って最高!明日から色々がんばろ!
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