予告状が届きました!

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予告状が届きました!

 池袋の路地裏にあるこじんまりとした西洋風な外観のお店、ビューティーサロン・エンジェル。そのビルの二階に位置する居住区エリアのリビングにて、事件は起きた。  「どうしよう、怪盗mから予告状が来ちゃった!」  事の発端は、サロンスタッフでもあり居住区エリアで寝泊まりをしているイケメン四兄弟のうちの一人、末っ子・カオルのこの一言。  朝イチでポストの中身を確認することが日課の彼は、その中に世間を騒がせている怪盗mからの予告状が紛れていることに気がついた。  慌てて二階へとかけあがり、優雅に朝食を楽しんでいた兄達に向かって叫ぶ、怪盗mから予告状が来たと!  末っ子の尋常ならざる狼狽えっぷりに事の重大さを感じた兄達は、朝食もそこそこに、リビングにて緊急会議をすることにした。まずはお互いに知り得ている情報を共有し、然るべき時に備えて対策しようという流れに。  提案したのは四兄弟の三男で眼鏡男子でもある、そこそこの頭脳派・アサギだ。  「まずはお互いに持っている情報を共有したい。俺が知っているのは、怪盗mはなぜか男のパンツばかりを狙う怪盗であること。これだけ世間を騒がせているにも関わらず、今だ逮捕されていないこと。そして、予告状が届いた家の年若い男のパンツが、百パーセントの確率で盗まれていること。  以上が俺の知っている情報だ」  眼鏡の位置を直しながら淡々と話す三男・アサギに、肉体派の次男・チハルが顔をしかめて抗議した。  「男のパンツなんか盗って何に使うんだよ、意味わかんねえ!  大体、この予告状だって本物かどうかもわかんねーだろ?  新手のイタズラかもしれねーし、無視しときゃいーじゃねーか」  その瞬間、アサギの眼鏡が光った!  「この予告状が本物である証明ができないということは、偽物である証明もまたできないということ!  相手はわざわざご丁寧に予告状まで書いてこちらに寄越してきているんだ。本物だと仮定して迎え撃つ準備をするのが妥当だと思うが。  それともチハルは、自分のパンツを大人しくくれてやる気でいるのか?」  ニヤリと笑う眼鏡男子・アサギの首元を掴み、体育会系男子・チハルは口元をひきつらせながら吐き捨てた、そんなわけあるか、と。  「あーもう、ちーくんもあっくんも喧嘩しないで~!  今は自分のパンツをいかに守るかに集中しよーよ!」  末っ子・カオルの鶴の一声により、冷静になった眼鏡男子・アサギと体育会系・チハルはお互いにうなずきながら無言で握手を交わし、あっさりと和解した。  「まあでも本当に変わった怪盗だよね、金品を狙わず、男のパンツを狙うんだから。  確かパンツを狙われる条件の中にイケメンであることが含まれていたはずだけど、これって僕たちが怪盗mにイケメン認定されたってことでいいのかな?」  アラサーの長男・ジュンは、イケメンという称号にまんざらでもない様子を示す。そんな最年長者の姿を、末っ子のカオルは哀愁漂う眼差しで見つめ、静かに首をふった。 「ジュンにぃ、浮かれてる場合じゃないよ。  実際にパンツは盗まれてるんだし。  近所に住んでいるアガタさんとこのイズミくんも、パンツ盗られたって言って落ち込んでたよ。 ジュンにぃは自分のパンツ、盗られてもいいの!?」 長男・ジュンにしがみつきながら、涙ながらに語る末っ子・カオル。そんな彼の健闘空しく、ジュンはさらっと言いはなつ。 「カオル。そんなにパンツを盗られるのが嫌なら、警察に連絡すればいいと思うよ?」  現役大学生でもある末っ子・カオルは膝から崩れ落ちた。イタズラだった場合、恥をかくのは俺たちなんだよと。 「じゃあ一時的に、金庫にパンツを保管しときゃいいじゃねーか」    あっけらかんという体育会系の次男・チハルに、眼鏡男子・アサギがツッコミをいれる。  「その間、風呂に入らない気か?  予告状には日付は書いてあるが、時間の記載はない。風呂に入っている間に脱いだ下着を盗まれれば終わりだ」  眼鏡男子である三男・アサギの冷静なツッコミにより状況を理解した体育会系の次男・チハルは、悔しげにリビングの床を叩いた。 「くっ! じゃあどうすればいいんだよ!」  チハルが諦めかけたその時、アサギの眼鏡が光った! 「それを今から考えるんだ。4つの頭脳を駆使して、怪盗を迎え撃つぞ!」  こうして四人の結束が深まり、作戦会議もさくさく進んだ。  予告状に記された日付は今日。時間がないなか、果たして四人のイケメン達は、無事自分のパンツを守りきり、怪盗mに打ち勝つことができるのかーー  熱い闘いが、今、はじまる。
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