四.スカイブルーの歌声

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四.スカイブルーの歌声

 階段を上った先、図工室の真上は音楽室だ。  真節小の音楽室の楽器は、古くても上等のものばかりだった。閉校にあたって、父が楽器の寄贈先を探していたのを覚えている。そのうちの一つが、あたしのギターだ。面倒な手続きを経て、どうにか許されて、あたしが受け取った。  寄贈先が決まらなかった楽器もあったはずだ。一つや二つじゃなかった。図書室の本もそう。比較的きれいだった一輪車やバスケットボールも。  もったいない話だった。でも、ほしいと言う誰かが引き取ることも許されなかった。だって、学校の備品は公共のものだ。勝手に持って帰れば、法律で罰せられる。  真節小の図書室で出会った大好きな本たちは、きっと、もうこの世に存在しないだろう。校庭にあった遊具、どこに行っちゃったのかな。全部、処分されてしまったんだろうか。思い出だけがたっぷり詰まった、もはや何の役にも立たないゴミとして。  ふと、和弘があたしの後ろに回って、カメラの画面をのぞき込んだ。 「これ、操作は簡単?」 「見てのとおり。スマホで撮影するのと同じ」 「じゃあ、おれが代わるけん、結羽ちゃん、ギターで何か弾いて。そのギター、ずっとここにあったたい。最後にもう一回、ここで鳴らしてやってよ」  いいね、と良一が言った。 「おれも和弘と同じこと考えてた。ギターの里帰りだよ。結羽の演奏も映したかったし」 「うん、うちも聴きたかった!」  あたしは和弘にカメラを渡した。正直なことを言えば、音楽室に入ったとたん、全身がざわめいたんだ。楽器が一つもなくなった、がらんどうな部屋なのに、音楽室だけに満ちる空気の匂いがここにはまだ残っている。  ギターケースを背中から降ろす。こもっていた熱がほどけて、背中がすーすーした。タンクトップもパーカーも汗で湿っている。 「弾いてもいいけど、泣かないでよ」  ケースからギターを取り出す。ストラップを左肩に掛けて、ざっとチューニングを済ませる。  和弘があたしにカメラを向けている。明日実はカメラのラインを避けて、横からあたしの手元をのぞき込んだ。 「結羽、何ば弾くと?」 「あの青い空のように」  良一も明日実も和弘も、ああ、と息をついた。  あたしがギターを弾くきっかけになった、地域を巻き込んでの学習発表会。そこで披露した曲が「あの青い空のように」だった。  あたしは三人に訊いた。 「歌詞、覚えてる?」  三人ともうなずく。  あたしと明日実、良一と和弘がペアで、あたしたちが主旋律、良一たちが副旋律を歌った。  声変わりした良一と和弘には、小学生の合唱曲って、ひょっとしたらきついかもしれない。大丈夫かと訊こうか迷ったけれど、やっぱりやめた。どうにか歌うだろう。もともと、二人とも歌が下手ではないし。  「あの青い空のように」は、ヘ長調の曲だ。ギターコードでいえば、Fメジャー。ファソラシドレミファのナチュラルの多い音階で、シだけがフラットになる。間奏に入れたリコーダーでは、和弘がシの指遣いに苦戦していた。  あたしはピックをつまんだ。音楽室を見渡す。防音効果の高い、ポコポコと穴の開いた独特の壁と天井。ギターの練習を始めたばかりのころ、すぐに指も手も腕も肩も痛くなって、途方に暮れて、ため息をつきながらあの壁と天井を眺めた。  ピックをつまんで、そっとささやく。 「うまくなったよ。あたしは」  ピアノを習っていたあたしは、小学生の割に指の力もあったし、関節も柔らかかった。だから、最初からそこそこできてしまったけれど、練習を重ねた今では、左手は苦労せず六本の弦を押さえることができる。ごまかしのFしか弾けなかったのは、昔のことだ。  和弘は、ビニール製のギターケースをうまいこと台にして、そこにカメラを置いて角度を合わせた。 「マイクのバランスって、あるやろ。歌うときは、きれいなバランスで撮りたかけん」  あたしは、ふと思い出して、フードをかぶった。ますます蒸し暑い。でも、このほうがいい。あたしは良一を振り向いた。 「歌う動画は、hoodiekidのほうがいいでしょ?」 「そうだね。ありがとう。演出に協力してくれて」 「別に。弾くよ」 「うん」  Fメジャーから始まる前奏。弾んだ調子で歌う青空の(うた)に合わせて、軽快なカッティングで伴奏する。  あたしと明日実が、なじんだ呼吸で歌い出す。一小節遅れて、輪唱の副旋律。良一と和弘の声を聞き慣れないと思い続けていたけれど、案外高く伸びるその響きに、ハッとする。丁寧に張り上げる声に、幼さの名残が確かにある。  あの青い空、と歌い上げるとき、良一と和弘の低音が、あたしと明日実を支える。なかなか音がハマらなくて、何度も何度も練習した。良一も和弘も、自分の旋律だけなら歌えるのに、高音がかぶさると、わけがわからなくなって。  テンポを落として、じっくりお互いの声を聞きながら、呼吸を合わせて、さあ。そんなふうに根気強く練習して、初めてハーモニーが噛み合ったときの感動。これだ、って叫んで飛び跳ねた良一と和弘。あのとき、本当に嬉しかった。  始まってしまった唄は生き物で、一瞬ごとに終わりに近付いていく。昔、リコーダーで奏でた間奏は、ギターで即興のアレンジを突っ込んだ。再び歌い出して、ああ、夢中になれる時間が、一瞬、また一瞬、過ぎ去っていく。  ずっと歌っていられたらいいのに。昔みたいなリズムで、呼吸で、ハーモニーで。  でも、時間は流れていく。唄は終わってしまう。  一番から四番まで歌い切った。埃っぽい音楽室の匂いが、ふわっと、最後の余韻を静かに呑み込んでいく。  自然と、四人で顔を見合わせた。全員、汗びっしょりだった。明日実は潤んだ目をしていたけれど、まだ泣いてはいなかった。和弘が我に返った様子で息をついて、カメラを回収に行く。  あたしはギターヘッドのロゴを見た。普通の小学生では触れる機会もないはずのブランド。いつ、誰が、なぜ、こんな上等なギターをこの音楽室に置いていったのか、結局、わからずじまいだ。  記録されないまま忘れ去られてしまったできごとが、ここにはたくさんある。つかまえようとしても、指の間からこぼれ落ちてしまう記憶が。誰にも見向きもされず、時の流れの中に置き去りにされた歴史が。  あたしは知りたかった。覚えておきたかった。  だって、ひとりぼっちは寂しいでしょう? 人も、モノも、コトも、孤独なまんまじゃ、やるせないでしょう? 「あたしね、練習したんだ。この音楽室で、ギターを、一人で、ずっと。弾けるようになるまで、何度も繰り返し練習してた。父が教頭先生じゃなかったら、こんなことできなかった。そういう特別、ほんとはイヤだったけど、ギターの件だけは感謝してる」  なぜだろう。あたしは急に話したくなった。話し始めてしまった。まるで歌うときのように、言葉があふれてしまう。  フードをかぶったからだろうか。唄歌いのhoodiekidだから、こんなに、言葉が止まらないんだろうか。 「島っていう場所は、小近島はもちろん、大近島だって別の島だって同じで、小さな世界なんだよ。あたしの両親は教師という職業で、変な言い方だけど、その小さな世界では、数少ない知識人階級。特別な存在なんだなって、あたしは肌身で感じた」  小さな世界は我が家を歓迎した。でも、あたしは小さな世界に溶け込まなかった。溶け込ませてもらえなかった。いつだって温かく接してもらっていたけれど、「松本先生夫妻のお宅のお嬢さま」という、特殊な身分に縛られていた。  あたしには、地元と呼べる場所がない。実家ってどこ? 二年か三年住んだだけの教員住宅。そんなもの、自分の家じゃない。幼なじみって何? まわりはみんな、生まれたころからずっと一緒の仲間なのに。  父のせいだ。母のせいだ。あたしはいつでも、よそ者の借り物のいい子でいなきゃいけなかった。あたしは本当は、ずっとここにいていいんだよと許してくれる、小さな世界がほしかったのに。  あたしは淡々と、言葉を吐き出し続けた。島の教師である両親のもとに生まれて、どんな思いをしてきたか。 「あちこち住んだ中で、小近島がいちばん好きだった。真節小は楽しかった。でも、タイムリミットも知ってた。最初から知ってたよ。あたしたちが卒業するときに真節小が閉校になるって。何で? せっかく好きになったのに、何で消えちゃうんだよ?」  閉校の手続きや書類整理に追われていた父の姿を、よく覚えている。忙しそうだった。でも、いつかはそういう役目を引き受けることになると、父もわかっていたみたいだ。  どの島も、子どもの数は急速に減っている。島の小学校で先生を続けていたら、閉校や統合に立ち会う可能性も低くない。 「父は初めての職務で一生懸命だった。それ以上に、真節小にとっての最後の日々になるから、そのために一つひとつ丁寧に、学校行事も日常もこなしていこうとしてた。大変そうで、でも生き生きとしてて。あたしも、父と同じようにしていたかった」  溶け込める場所がほしい。そんなもの手に入らない。  両親の仕事が嫌い。両親の仕事が誇らしい。  相反するものの間で、あたしはいつも揺れていた。心を揺らすのは危険なことだと、自分でもわかっていたのに。だって、小近島という小さな世界に入り込んでしまったら、いずれ来る別れのとき、苦しくて仕方ないんだから。  物心つくのがひどく早い子どもだったという自覚がある。四歳のころに経験した引っ越しで、あたしは思い知った。小さな世界を好きになればなるほど苦しい、と。だから、最初からサヨナラまでのカウントダウンをして、泣かないように備えなきゃ。  和弘がカメラの向こう側から言った。 「結羽ちゃんが難しか気持ちでおること、知っとったよ。卒業式のときに言いよったやん」 「あたしが? 何か言った?」 「結羽ちゃんのおかあさん、あの日、岡浦小の卒業式やったけん、真節小に来られんかったろ。結羽ちゃん、そのこと、笑いよった。教頭先生が卒業式の司会ばするけん、おかあさんはおらんでも平気、って」  そう思っていたのは事実だ。運動会も授業参観も、母は自分の学校の何かと重なって、あたしのほうに来られなかった。あたしにとってはそれが普通だった。真節小には父がいる。母にまで来てほしいと言うのは、わがままが過ぎる気がした。 「あんたにそんなこと言ったっけ?」 「お、記憶力抜群の結羽ちゃんが、珍しく覚えとらんそうです。聞いたよ、おれ。結羽ちゃんがもうすぐ引っ越すっち知って、一秒でも長く話しとこうっち思っちょったけんさ。卒業式の日とか、ずっと一緒におったし」 「スカートをからかわれたのだけは、すごいよく覚えてる」 「似合うっち言うた」 「からかわれてるようにしか聞こえなかったよ、バカ」 「結羽ちゃんさ、泣かんやったろ? 卒業式でも、閉校式でも、引っ越しのフェリーに乗るときも。おれ、全部、泣いたとに。何か悔しかった」 「あっそう」  あたしは、カメラからも和弘からも顔を背けて、ギターをケースにしまった。急に、気まずさが込み上げてきた。さすがにしゃべりすぎだ。あたしはギターを背負って、顔を背けたまま、和弘のほうに右手を突き出した。 「カメラ。撮影、あたしがやるから」 「おれにやらせてよ。結羽ちゃん、後でまた弾くやろ。どっちみち、そのときはおれが撮影ば代わるつもりでおったし」 「映されるの、好きじゃないんだけど」 「良ちゃんメインで撮るけん、結羽ちゃんは気にせんで」  ああ、もう面倒くさい。  あたしは和弘の背中側に回った。この位置なら、和弘も映しようがない。あたしの意図を悟ったらしく、横顔で振り向いた和弘が、小さく笑った。あたしがにらむと、和弘は肩をすくめて前を向く。  和弘の肩は、ずいぶん広い。筋肉質な腕は太くて、首筋もがっしりしている。知らない男の人がいるって、良一や和弘に対して何度も思ったことを、また思った。 「じゃあ、次、行こっか」  良一が合図して、あたしたちは音楽室を離れた。  あたしたちが過ごした教室が、そこにあった。学年を示す札や机や椅子がなくなっても、あたしたちの教室だってわかる。だって、黒板に向かって後ろのほうの床がつやつやしている。埃をかぶっていてさえ、ほかの部分とは色つやが違う。  良一が靴の底で床をこすった。 「休み時間のたびに、ここで座り込んだり寝転んだり、和弘とプロレスごっこしたりしてたもんな。気付いたら、床が見事に磨かれてた」  明日実がころころと笑う。 「そのぶん、うちらの服が汚れまくっちょったっちゃろうけど、全然、気にせんやったよね」  後ろの壁に備え付けられた、ランドセル用の棚。ベランダ側の窓の下には、ずらりと、荷物を引っ掛けるためのフックの列が遺されている。廊下側の窓のそばに長机があって、その上にいつかの誰かが作った本立てがあって、それが学級文庫だった。  四人で占領していた教室。先生はガキ大将みたいな人だった。今は本土の大きな小学校に赴任して、責任の重い仕事を抱えて、てんてこ舞いらしい。両親がそういう話をするのを聞いた。  一つ年下の和弘が一緒のクラス編成は、複式学級と呼ばれるものだ。担任の先生にとっては難しい体制だと思う。二学年ぶんの授業内容をきちんと把握しないといけない。子どもと一対一の場面が多いから、相性の良し悪しにごまかしが利かない。  あたしたちは本当に平和だった。先生とも仲がよかった。先生は、みんな積極的に学ぶ子だから助かる、と言ってくれていたけれど。  でも、実際、そうだったかもしれないな。先生を含めた五人で協力して、特殊な形の授業を進めていくことは、何だかゲームでもやっているみたいに楽しかった。自由だったなと、今にして思う。  一人だけ学年の違う和弘は、算数が遅れ気味だった。あたしはいつもさっさと自分のプリントを片付けて、和弘を教える役に回った。あるいは、先生が和弘を教えているときは、良一や明日実からの質問に答えていた。  算数が苦手な一方、和弘は国語や社会が得意だったから、自分の課題を素早く終わらせると、あたしたちの授業内容にまで首を突っ込んできていた。岡浦小に通った六年生のころは、国語や社会でいい成績を取れたんじゃないかな。  明日実が、いきなり、プッと噴き出した。 「先生が逆立ちしようとして引っくり返ったこと、覚えちょる? 漢字の小テストのとき、黒板の溝と教卓に手ば突いて、体操競技んごと逆立ちしようとして、頭から落ちたこと」  良一と和弘も笑い出した。あたしもつい、ちょっとニヤッとしてしまって、下を向いて顔を隠した。  先生はいきなり「内村航平!」と、県内出身の体操選手の名前を叫んだ。声につられて、あたしたちは漢字のテストから顔を上げた。先生は、鞍馬の技みたいな何かをしようとして、豪快な音を立てて落下した。あたしたちはあっけに取られた。 「何となく、できる気がしたとに」  先生はそう言って、痛みの涙をにじませながら爆笑した。あたしたちは、とりあえず先生が無事らしいとわかってから、ようやく笑った。そうしたら、笑いが止まらなくなって、もう漢字のテストどころじゃなくなった。  本当に意味がわからなくて、それがおかしくてたまらなかったんだ。先生は子どもみたいに突拍子もないことをする人だった。子どもだったあたしたちでさえ、負けたなって思ってしまうくらい、大人のくせに、わんぱく坊主だった。  良一が、笑いすぎの口元を手で隠しつつ、思い出話をする。 「先生って、修学旅行のときも、子どもだった。すごく、はしゃいでて。佐賀の科学館でも福岡の水族館でも。おれ、あんな大人になりたいと思ったんだよね」  六年生のときに行った修学旅行は格別の思い出だった。あたしたち六年生の三人だけじゃなくて、五年生の和弘も、もちろん一緒だった。楽しくて楽しくて、帰ってきてからも、何度も何度も語り合った。  明日実が目を輝かせた。 「あのとき、うち、生まれて初めて本土に渡ったっちゃもんね。和弘は小さいころに病気になって、自衛隊のヘリで本土の病院に運ばれたことがあるけど」  島の小学校の修学旅行は二泊三日だ。島外へ出る移動時間を考慮して、本土の小学校よりも一泊多い。  和弘がつぶやいた。 「結羽ちゃんと良ちゃんが真節小に来てくれて、よかったよ」  明日実が、ふっと微笑みを和らげた。 「そうそう。来てくれて嬉しかった。結羽が五年の四月に転校してきて、すぐに良一も来てくれて、四人になった。ずっと和弘と二人で卒業するまで過ごさんばいけんって思っちょったけん、ほんと、ざまんごて嬉しかった」  良一が遠い目をした。 「平和な学校があるんだなって、びっくりしたよ。教会の施設から通う転校生なんて、いじめられて当然だと思ってたのに」  奇跡みたいだと、あたしも思った。真節小にはいじめがなかった。たった七人では、いじめなんてもの、成立しようもなかったのかもしれないけれど。  でも、あんなに仲がいい子どもたちの集まりなんて、真節小のほかには知らなかった。みんなが兄弟姉妹みたいだった。  実際、血のつながりがなくても、にいちゃん、ねえちゃんって呼び合うのが小近島の習慣だった。大人たちも、お年寄りもそうだった。年の近い和弘は別として、あたしも年下の子たちから、ねえちゃんって呼ばれていた。その響きが新鮮だった。  あたしは真節小に来る前、大近島でいちばん大きい小学校に通っていた。児童数は約五百、一学年に三クラス。両親を通じて耳に入ってしまった裏情報によれば、なかなかに問題の多い学校として有名だったらしい。  いじめを初めて目撃したのは、三年生のころだった。あたしは、なぜその子をいじめるのかという具体的な問題というより、いじめる側といじめられる側が存在するという力関係そのものがまったく理解できなかった。  あたしは、いじめられている子にも普通に接していた。それがクラスの中でのタブーだと、ちっとも感じ取れなかった。だからといって、あたしに被害が及ぶことはなかった。  何せ、あたしは特別だった。勉強ができたし、何でもハッキリ言うし、教員の子という特殊な身分だ。その上いじめすら超越してしまったと、まわりはあたしを持てはやした。  いじめというものが理解できなかったというのは、きっと、あたしの本質をハッキリと示す証拠の一つだった。あたしは集団生活が苦手だ。  女の子は普通、だんだんと集団生活を身に付けていく。そうする中で、自分に近い人とそうでない人を見分けて、グループを作り、仲間外れを作る。あの子は違う種類の子、という素朴なフィルターが、いじめの根っこにある。  あたしは、仲間と仲間外れの見分けが付かなかった。グループを作るのが普通だと気付いてからも、フィルターを分ける意味がわからなかった。納得できないことはやりたくなかった。だから、いじめには加わらなかった。  ただ、いじめというものが確かにあるんだと、四年生になるころには見えるようになっていた。いったん見えるようになると、人間関係の色分けができるようにもなった。それぞれの色の中で一生懸命に団結しようとする人たちを、冷めた目で見ていた。  あたしはどこにも入るもんかって決めた。自分たちの色を濃くするためには、ほかの色の悪口を言うのがいつものパターンだ。そうやって濃くなった色はどれも、汚く濁っている。そんなものに染まりたくない。  最初に良一を見たとき、前の学校でいじめられていたんだろうと、あたしはすぐに勘付いた。的外れではなかったらしい。小近島教会のシスターが野菜のおすそ分けを持ってあたしの家に来たとき、良一の過去について、母と話す声が聞こえてしまった。  複雑で凶悪な家庭事情らしかった。本人には「家族がいない」と伝えるほうがよほど誠実で親切だ、というくらいに。  でも、良一は暗い子じゃなかった。普通に笑うし、ちゃんと食べるし、勉強だって頑張っていた。運動は少し苦手だった。いい子でいようと必死で、泣きながら笑っていることもあった。涙を流しているのに、自分で気付いていなかった。  明日実が良一を見上げた。 「良一は一生懸命、方言ば覚えたよね。最初はいろいろおかしかったけど、だんだん気にならんごとなった。普通に島の言葉ば話すごとなったよね。今は東京の言葉になっちょっけどね」 「それさ、昨日、結羽に指摘されたんだ。無理に方言でしゃべろうとしてたら、不自然だからやめろ、って」  明日実があたしを見る。 「結羽は標準語のまま。あのころも今も。どげんしたら、そがんきれいか発音で話せると?」 「別に、普通にしてるだけ」 「教頭先生は方言で話しよったとに」 「父は島の出身だから。まあ、父が話す言葉は、小近島の言葉とは微妙にイントネーションが違うけど」  和弘があたしにカメラを向けている。だからあたしは、そっちを向かない。 「結羽ちゃんは、何でいつも標準語ば話すと? そのこと、ずっと気になっちょった。小学生のころの結羽ちゃんは、笑ったりふざけたり、おれたちに打ち解けちょったけど、でも、完全じゃなかった。言葉が違っちょったもん。ときどき寂しくなった」 「寂しいとか、意味わかんない」 「わかってよ。それと、答えてよ。結羽ちゃんの言葉遣い、何でずっと変わらんままやったと?」 「簡単なことだよ。あたしは小近島の子どもじゃないんだから、ここには染まれなかった。染まるつもりがなかったの」  和弘が、そっと、あたしの名前を呼んだ。「ゆう」が高い標準語と違って、「ちゃん」で上がる独特のイントネーション。 「結羽ちゃん。おれは、結羽ちゃんが初恋の人でした。もっと近付きたかった。なのに、何か、見えん壁があった。それが本当に、ざまんごて寂しかった。嫌われちょらんでも、拒絶されちょっとやなって感じちょった。ダメージ、でかかったよ」  初恋の人。  その言葉は、知っている。いつからか、気付いていた。 「和弘って、意外とおしゃべりだよね。あたしの動画のコメント、書き込んだ数がいちばん多くて、いちばんぶっちゃけてる」  KzHっていうハンドルネームは、和弘だ。あたしが恋を否定した「あたしたち」の唄の意味を、国語の得意な和弘は正確に読み取っていた。  四人で八つの瞳を交わし合ったあのころから、今だってずっと、あたしは恋なんか知らない。そうやって、手を差し伸べようとする人のすべてを否定して突き放すのは、痛々しい。  和弘はギュッと眉をしかめた。 「結羽ちゃんに気付いてほしかったっちゃもん。結羽ちゃんとしゃべりたかった」 「動画のほうではしゃべんないって決めてるの」 「おれに気付いちょったとに?」 「そうだよ」 「クールやな。そげんところ、全然変わらん。本当にあっさりした顔して引っ越していったやろ。おれは、ずっとここにおってほしかったとに。本土の中学なんか行かんで、小近島に住んで、おれたちと一緒に船に乗って岡浦の学校に通えばよかって」  あたしは顔を背けた。 「無茶言ってる。あたしが引っ越さなきゃいけないこと、あんただって最初から知ってたはずだよ」 「知っちょっとと、わかっちょっとって、別やろ? 結羽ちゃんが大人たちに頼み込んで、一人で小近島に残ってくれんかなっち、本気で想像したよ、おれ」  あたしだって想像した。慈愛院の子どもの面倒を見るのを手伝って、教会にいさせてもらえないか。明日実と和弘の家の手伝いだっていい。住む場所は、もう誰も使わない教員住宅がいくつもある。あたしは小近島の子になりたい。  そんな都合のいいこと、できるはずなかった。 「好きで本土に引っ越したわけじゃない。あっちに移ったって、楽しいことなんか一つもなかった。苦しいばっかりで、今も……!」 「戻ってこいっち。結羽ちゃんの居場所、ここにはあったやろ?」  あたしは首を左右に振った。うなずくわけにはいかなかった。あたしは最初から、ここに居場所を求めないように、注意深く心を抑え込んでいた。引っ越さなきゃいけないし、学校そのものが消えてしまうし、だったら、大事になんかできるもんかって。  でも、大事だった。だから、バラバラになりそうだった。一生懸命、形を保とうとした。平気なふりをして、見えない壁を作った。居場所はここなんだ、壁の内側の一人ぶんの空間なんだって、必死で自分を説き伏せた。  明日実が、ポツンとつぶやいた。 「ほんと、思い通りにいかんことばっかりやね。あのころのまま、みんな、いつまでも一緒におられればよかったとに」  良一がうつむいた。 「おれも、高校まで慈愛院で過ごすつもりでいた。小近島を出るかどうかは、もっと大人に近付いてから決めようと思ってた。今の家族も仕事も学校も好きだけど、大好きだけど、東京に移るって決まったとき、最初はすごく寂しかったよ」  仕方ないっていう言葉を、島での時間を共有したあたしたちは、教えられる必要もなく、ひりひりするほど理解している。  状況は変えられなかった。仕方なかった。大好きな学校がなくなってしまうことも、あたしの両親が先生であることも、良一に新しい家族ができたことも、明日実と和弘が島で生きていくことも、どうやったって変えられない、仕方のない現実だった。  教室の窓を開けてみようとした。古めかしい窓のスチールのフレームはガチガチにさびて、動かなかった。さび止めのライトグリーンの塗料も、触れるだけでボロボロと崩れて落ちた。  汚れきったガラス窓越しに、校庭を見下ろした。人が集まり始めている。  良一が腕時計に目を落とした。 「そろそろ外に出ようか」  明日実がポケットからスマホを出した。 「最後にここで写真ば撮ろうよ」  抜け殻になった小学校の教室で、高校生になったあたしたちは、卒業式の日に撮ったのと同じ並び方でフレームに収まった。あたしと和弘が仏頂面で、良一と明日実が笑顔なのも、卒業式の写真と同じだった。  廊下に出て、屋上へ続く階段を見上げたら、大きなクモの巣があった。あのへんにゲジゲジが出たことがあったな、と思い出した。明日実が大騒ぎしたっけ。島育ちでたくましいように見えて、明日実は、脚の多い虫が苦手なんだ。  ゲジゲジを追い払ったのは、良一だった。臆病そうな印象のくせに、虫にも蛇にも蛙にも動じなかった。きょとんとして、そして、誰にも聞こえないような声で言った。人間に比べたら、どんな生き物も怖くないよ、と。  あのころは、良一の言葉の意味がよくわからなかった。でも、ぐっさりと深く、胸の奥に刺さった。  その傷は今、ハッキリと、あたし自身の感情や経験と共鳴している。人間というものと出会えば出会うほどに。ギターを掻きむしって唄を歌えば歌うほどに。自分のボロボロの心を見つめれば見つめるほどに。共鳴する振動が、痛い。  校庭に重機が乗り入れると、かろうじて薄く残っていた砂が舞い上がった。巨大なペンチみたいなものをくっつけた、キャタピラを履いたあの機械は、何ていう名前なんだろう?  大きな建物が壊される現場を見たことがある。あれは小学生のころ、秋のスケッチ大会で。数人ずつの班に分かれて、大近島の商店街を題材に、絵を描いた。あたしの班に割り振られた題材は、港のそばにあった古いホテルの解体作業の様子だった。  あの巨大なペンチが、建物の分厚い壁に噛み付くんだ。メキメキと凄まじい音を立てて、コンクリートも鉄骨も千切り取られていく。埃がもうもうと飛ぶ。瓦礫がバラバラとこぼれる。建物は、少しずつ、少しずつ、うつろになっていく。  作業服の人々は校庭の隅にいて、トラックの荷台から三角コーンや看板を降ろしていた。看板は校門のほうへと運ばれる。真節小が敷地ごと立ち入り禁止になるための準備が、素早く進められていく。  時刻は九時四十分を回っている。校庭には、いつの間にか、五十人ほどの人が集まっていた。真節小の卒業生たちだ。中心にいるのは明日実と和弘の伯父さんで、市役所に勤めている。  明日実は、伯父さんに手招きされて、大人たちの輪のほうへ走っていった。伯父さんと明日実は、それから、トラックのそばへと小走りで向かった。作業服の人々に一言、挨拶をするためらしい。  カメラは相変わらず、和弘の手にある。和弘はゆっくりと、校舎を、校庭を、重機を、集まった人々を、そして、あたしと良一を撮った。大人たちはしゃべっている。あたしたちは黙っている。  やがて、明日実と伯父さんが戻ってきた。ああ、始まるんだ、と思った。お別れの時が、本当に始まる。  明日実はみんなのほうを向いて、声を張り上げた。 「もうすぐ真節小の校舎ともお別れです! 今日、これから、解体作業が始まります! こんなに近くで真節小ば見られるとは、今、この時間が最後になります!」  その一言だけで、校庭のあちこちから涙の気配が立ち上った。  明日実の伯父さんが、三十数年前に卒業した母校へ向けて、大声で感謝の言葉を述べた。明日実たちのいとこで、島いちばんの秀才である現役医大生が、泣きながら母校に語り掛けた。  似た場面があったな、と思い出す。四年前の春、閉校式のときだ。真節小の思い出を、手紙みたいな作文にして、真節小に宛てて読んだ。  正直言って、あのときは、ちょっと現実感がなかった。校舎はまだ残るんでしょ、って。どっちにしたってあたしたちは卒業してここに通わなくなるんだし、って。  やっとだ。今になって、やっと、あたしたちが大きなものをなくしてしまったんだという事実が、胸にぐさぐさ突き刺さってくる。  たくさんの思い出に彩られた、大好きだった小学校が、名前をなくした。未来をなくした。そして、これから、姿さえなくしてしまう。  卒業生代表の挨拶を二つ呑み込んで、校舎は沈黙している。あと一分で、午前十時。工事が始まる時刻だ。  明日実が声を張り上げた。 「校歌斉唱!」  明日実があたしを振り返った。あたしはうなずいて、校舎に一礼する。あたしが今日ここへ来た理由、明日実がここへあたしを呼んだいちばん大きな理由は、これだ。  あたしにできる、精いっぱいのサヨナラは、ギターの音を響かせること。あたしは、抱えたギターにピックをぶつける。  校歌の伴奏は、本当はピアノで奏でられていた。ここにピアノはない。あたしは、覚えている音を、できる限り忠実にギターで再現する。  四小節の前奏。大人たちの表情が、ああ、と驚きに輝いた。わかるよね。覚えているでしょう。まぶしっ子は、この歌、絶対に忘れないよね。  息を吸う音が重なる。  高い声、低い声、いろんな声が、ぴたりと同時に歌い出した。弾むように明るい校歌が、四年ぶりに、真節小の校庭に響き渡る。 山なみに朝の日映えて 入江清く潮みつところ あこがれのこの学び舎に 新しき歴史を創る われらわれら力の限り 母校の光たたえん まぶし小学校  閉校記念誌に校歌の楽譜が載っていた。明日実から伴奏の話をもらったとき、改めて、譜面を追った。  明るい曲だ。Cメジャー、つまり、ドミソの和音が基準にあって、どの小節でも音が濁らない。飛び跳ねるテンポは、あたしが知るほかのどの校歌より、元気がよくてポップだ。いちばん耳に残っている。いちばん心に刻まれている。  BPM120、校歌は二番まで。午前十時までの一分間では、曲全体が収まり切れない。あたしにはそれがわかっている。途中で打ち切られたら、どうしようか。  間奏のフレーズに指を躍らせながら、あたしは重機のほうをうかがった。安全ヘルメットをかぶった人たちは並んで、じっと、あたしたちのほうを向いている。校歌を聴いている。  まだ歌っていていいんだ。最後まで歌っていいんだ。 こんぺきの大空高く 豊かなる望みをのせて ふるさとの伸びゆく明日へ 新しき伝統きずく われらわれら力の限り 母校の誉れたたえん まぶし小学校  あまりにも現実からかけ離れた、希望に満ちた未来を歌う詞。真節小は、もう歴史も伝統も閉ざして、小近島の将来だってきっと、これ以上、伸びてはいかない。  どうしてこんなに、この場所を好きになってしまったんだろうか。  サヨナラの(うた)を歌ったって、古びた校舎は何も応えてくれない。小さな島は、ただここにあるだけだ。そんな簡単なこと、わかっているくせに、どうして、あたしはこんなにも歌いたいんだろうか。  歌い終わったのに、二番までしかない短い校歌は終わってしまったのに、ありもしない後奏をくっつけて、なつかしい唄をギターの旋律でもう一度たどる。みんな聴いている。泣きながら。あたしが演奏をやめるときが、サヨナラの瞬間だ。  悲しい。でも、よそ者であるあたしの悲しみなんて、明日実や和弘たちのいだく本物の喪失感とは違うんだろうと思う。生まれたときから絶対にそこにあると信じてきたものを、明日実も和弘も失うんだ。あたしは、ここから去っていけるけれど。  だから涙は流さないと、卒業式でも閉校式でも、唇を噛んで目を見開いた。明日実よりも激しく泣いてしまったら、和弘に「わかるよ」なんて言ったら、どこかに嘘がまぎれ込むような気がして。  同じ場所に立って同じ悲しみにひたることができなくても、せめて、できるだけ嘘のない自分でいたくて。  唄が終わる。あたしは、最後のCメジャーを掻きむしって、一本のギターに出せる最大限に華やかな音で、ラストをしめくくった。  余韻。セミの声。潮風が山を駆け抜ける音。  明日実が再び声を張り上げた。涙をこらえて、はち切れそうな声だった。 「気を付け、礼! 真節小学校、ありがとうございました!」  ありがとうございました! 全員が、腹の底からの大声で言って、深々と礼をした。泣き声があちこちから聞こえた。  立ち去らなければならない。  最初に大人たちが、工事担当者たちに頭を下げて、校舎のほうを見ずに、足早に去っていく。明日実の伯父さんだけが、突然振り向いて、屋上に向けて手を振った。まるでそこに誰かがいるみたいに。  誰もいない。いるはずがない。屋上には、国旗掲揚のためのポールが、夏の日差しの中で鈍く輝いている。  祝日を思い出した。屋上のあのポールに国旗を揚げるのは、教頭先生である父の仕事だった。あたしも何度もついて行った。正月一日も、初詣の前に真節小に寄って、冬の季節風が吹き付ける屋上で、父が旗を揚げるのを見ていた。  大学生や若い大人たちが、無理のあるはしゃぎ声を上げて、自撮りするぞと騒ぎ出した。言い出しっぺの、日に焼けた男の人が、スマホを持った手を低く伸ばして、その背後に押し合いへし合い、全員を立たせて、校舎をバックにシャッターを切る。  わーっと、にぎやかなあの人たちは、あたしたちよりも人数が多かったころの卒業生だ。たった四人のあたしたちは、あんなににぎやかに苦労しなくても、簡単にスマホのカメラに収まってしまう。  まるでただの下校時刻みたいに、自撮りを終えた泣き顔の大人たちは、無理やり笑って校舎を見上げる。バイバーイ、って、わざと軽い声で言って、足並みをそろえて帰っていく。  あたしたちも、もう、行かないと。  のろのろと、あたしはギターをケースにしまった。和弘がしきりに鼻をすすりながら、カメラを良一に返した。良一はカメラを受け取って、手の甲で涙を拭った。  明日実は笑った。 「じゃ、行こっか」  声を出した瞬間、つっかえが取れたみたいに、明日実は、わーっと泣き出した。子どもみたいに大泣きしながら、明日実は歩き出す。和弘が明日実の肩を抱いた。良一の目からも、ぽろぽろと、涙が止まらない。  あたしたちは、校舎に背を向けた。遊具も何もなくなった、乾いた校庭を歩いていく。校舎が取り壊された後、ここがどうなるのか知らない。あたしはもう二度と、ここへは足を踏み入れないかもしれない。  真節小が好きだった。古びた校舎が好きだった。たった四人で占領した教室が好きだった。今となってみれば信じられないくらい、毎日、笑ってばっかりだった。ただただ楽しかった。  あたしが初めて真節小の校舎に入ったのは、始業式の日じゃなくて、引っ越してきた当日、三月の終わりだった。  小近島への引っ越しは、運送会社の管轄外だった。代わりに、真節小に関わるいろんな人が総出で手伝ってくれた。その中に明日実と和弘の家族もいた。  荷物の運び込みが一段落した後、明日実と和弘が、あたしと父を連れて、校舎の中を案内してくれた。まだ良一が来る前だったから、全校児童は六人。全員が兄弟姉妹みたいなものだと、明日実と和弘は言った。広すぎる校舎は、探検するにはぴったりだった。  なくなってしまう。大切だったものが。 「何でだよ……」  悪いことをしたから取り上げられるとか、そんなんじゃない。誰も何も悪くなかった。ただ、そういう運命だからあきらめなければならないのだと、いきなり突き付けられた。失いたくないものを失う道へと、突然、放り込まれた。  どうして? 何で?  繰り返したって、仕方のない問いだ。でも、だけど、胸の中に熱いものが渦巻いている。せり上がってくる感情で、喉の奥がゴツゴツして、鼻がツンとする。  泣きたくない。泣くもんか。泣くためにここへ戻ってきたわけじゃないんだ。  あたしは振り返る。巨大なペンチの重機が、キャタピラを転がして、校舎に近付いていく。  サヨナラ。  あたしにたくさんのものをくれた、あたしの大切だった場所。  サヨナラ。サヨナラ。サヨナラ。  あたしは泣かないから。
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