秘められた過去 2

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秘められた過去 2

「凄い数の本だな!」  ヨウの眼が珍しく明るく輝き出した。  君はこんな表情も出来るのか……知らなかったな。あぁそうか……ヨウの父親は、前々の王様の大臣だったから、本来ならばかなり高貴な身分のはずだ。だから剣を持つような役ではなく文官として平和に穏やかに生きられたはずだ。  幼い頃から勉学にも励み、知識も豊富だろう。そんなヨウが何故、このように敵とはいえ人を殺めるようになったのか……それは分からない。  今、ヨウが昔を思い出したかのように莫大な本の前で胸を高鳴らせている姿を見ていると、何故か切ない気持ちになった。 「ヨウ……」 「……」  ヨウは私の存在すら忘れ本に夢中になっていた。なので彼を部屋に残し、静かに見守ることにした。しかしもう夜も更けたというのに、彼は本を読むことが止まらないようで部屋から出てこなかった。 「なぁもう夜も更けたから今日は我が家に泊まって行かないか。こちらの部屋に寝具を用意させるから」  結局、私の私邸であれから何時間も異国の本に夢中になってしまったので、宿泊を提案してみた。 「えっ……あぁもうこんな時間だったのか、すまない。だが俺がいたら家の人に迷惑ではないか。それにジョウは結婚しているのでは?」 「ははっ家には今宵は誰もいないし、私は独り者だ。以前そういう縁談話もあったが全部断ってしまってね」  ヨウは意外そうな顔をして、その後ほっとしたような表情になった。 「そうだったのか……ならばそうさせてもらおうか。こんな風に人の家に泊まるのも久しぶりだ」  微かに微笑むその表情。  王宮で緊張した面持ちで過ごしているヨウよりも、少し子供っぽい笑顔を浮かべる綺麗な横顔に、ドキッと見惚れてしまった。 **** 「じゃあ……おやすみ」  隣の部屋の灯りが消えるのを確認して、私も自室で横になるが、ヨウが近くにいると思うと何故か胸が高鳴って、なかなか寝付くことが出来ない。  参ったな……私としたことが、女が泊りに来ているわけでもないのに、こんなにドキドキして。    寝付けないので寝返りを繰り返していると、何やら隣室から何やら小さな音がする。これは……ヨウの声なのか。 「ううっ……あぁっ!」  隣室から苦しげな呻き声が聞こえて来たので、驚いた。 「どうした?何にうなされている?」  あまりに辛そうな様子なので心配になり部屋を覗くと、ヨウは苦痛の表情で顔を歪めていた。額には大粒の汗が浮かんでいた。金縛りにあったように躰が硬直していた。 「おいっしっかりしろ!一体どうしたのだ?」  私は思わず部屋に入り、ヨウの怯える肩をゆさぶり、悪夢から引き戻してあげようと必死になった。
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