赤い髪の女 7

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赤い髪の女 7

「くっ」  声を殺して震えるヨウの口腔内に指を入れ、唾液で混ざる中をかき乱す。口からも下からも激しくヨウを攻めたてる。 「うっ……もう……もういい。充分だ。戻らねば」  潤んだ眼で、己の高まりを必死に抑え込もうとするヨウの背中が切ない。 「ヨウ駄目だ。まだ冷たい。もっと声を出していいんだ。ここは外に聴こえない構造になっている」 「王様が大変な時に、俺だけこんな風にお前に温めてもらうなんて……俺は狡い奴だ」  私のことを振り返ったヨウの眼もとは、悔しそうに強く光っていた。それでいてどこか心許ない頼りなさを醸し出していた。切ない表情を浮かべるヨウが本当に小さく小さく見える。  ヨウ……君はこんな時でも周りのことに気を配ってばかりだ。君自身をもっともっと大切にして欲しい。そうしないと、いつか君は自分の身を犠牲にいなくなってしまいそうだから。君はもう充分苦しんだ。せめて私と肌を合わすこの時間は、悩みや苦しみから解き放たれていいんだよ。 「なんてこと言うんだ。君が元気を出さないと、王さまをお守りできないんだから。しっかりしろ」 「ジョウ……お前はいつだって俺の味方だ」 「さぁ!」 「くっ」  扱いている手の速度を高めるとヨウは肩を震わせ、白濁のものを放ったので、手のひらに温かい液体を受け止めた。ヨウの額には粒のような汗が浮かんで、目元も頬も耳も赤くなっていた。 「温かくなったな」 「……ちゃんと挿れて欲しい」  ヨウが私の手を導き誘ってくる。 「だが……立ったままではきついだろ」 「いいんだ、ここで今すぐ抱いてくれ!」  いつになく積極的なヨウの行動を、断れるはずないじゃないか。私のものも高まったままで限界に近いのだから。白濁を受け止めた手でヨウの窄まりに触れ、解かし、一気に挿していく。突き上げる衝動でヨウは顎を上に反らし、小さく喘いだ。ヨウを背中から抱きしめて、何度も深く強くヨウを己で突き刺して抱いた。 「はっ……くっ……」  これは王宮の薬品庫での二人きりの秘密の営みだ。せわしなく過ぎ去る束の間の逢瀬だが、それでも少しの時間でもヨウとこうやって一つになれることが喜びだ。 ****  朝日が昇りきる前に、赤い髪の女に会うために私は王宮を出立することにした。マントを被り顔を隠し、目立たぬように見送るヨウが、心配そうに私の手を握りしめてくる。 「ジョウ……一緒に行きたい」 「そんな顔するな。赤い髪の女を連れてすぐに戻ってくるから」  朝もやで辺りが霞む中、深く被った黒いマントに隠れたヨウの可愛い唇に軽く口づけしてやると、途端に顔を赤らめるヨウが愛おしい。 「ジョウ!駄目だ!こんなところで」 「誰も見ていないよ、さぁ行ってくるよ」 「全く……あぁ気を付けて」  心配そうなヨウに見送られながら私は旅立った。赤い髪の女の施す医術をこの目で見たいという。医師としての欲求が、私を奮い立たす。  手紙の送り主は敵国との境界を守る役所だ。いつ戦が仕掛けられるか分からない地だから、正直安全とは言えぬ。だが私は行かねばならぬ。  赤い髪の女が王様を救えるかもしれない。  そのことに一縷の望みをかけて──  そしてそのことはヨウを救うことにも繋がるのだから。
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