秘められた過去 3

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秘められた過去 3

「ヨウ、一体どうした?」  私の声ではっと我に返ったヨウは、額の汗を自らの手の甲で拭いながら起き上がった。 「ジョウか……すまない。何でもない。少し悪い夢を見ただけだ。大丈夫だだ」  平静を装い強がっているが、身体はまだ小刻みに震えている。君らしくないぞ。いつもの強さはどうした?  どうして今宵は、君のことがこんなにもか弱く見えるのだろう。弱ったヨウを見守るうちに、急に震えるその躰を私の腕の中にきつく抱きしめてやりたくなった。まるで女のようにヨウを腕に閉じ込めたくなるなんて……変だ。  自分の邪な考えに驚いてしまい、慌てて追い払うように頭を振り持ちを切り替えた。 ****  私は部屋の片隅に置いておいた着替えと布を、ヨウにそっと渡した。 「ひどい汗をかいたな。これに着替えたほうがいい」 「ありがとう……悪いな。そうさせてもらうよ」  まだ辛そうで、夢から覚めやらぬ表情のヨウは着物の襟元を緩め、額や首筋の汗を拭き始めた。  鎧を纏い隊長として先頭に立ち任務をこなしている時には気が付かなかった。こうして薄い衣で震えている姿は、まだ横顔に少年の面影が残る少し頼りない儚げな青年だった。    それにヨウの月明かりに照らされた首筋の色白さや、耐えるようにきゅっと結んだ綺麗な形の唇とその甘い色が妙に艶めかしい。  もともと綺麗な顔立ちだとは思っていたが、こんなに艶めかしいなんて。  こんなにも弱っているヨウを見るのは初めてなので、戸惑ってしまう。そのせいなのか私は突然、今までにない湧き上がるような甘酸っぱい妖しい感情を抱いてしまった。 「何にうなされていた?心が少しでも軽くなるのならば、私に話してみないか」 「ジョウ……君には関係のないことだ。もういいから戻ってくれ!」  少しいらついたヨウの棘のある返事に私は落胆したのか、急に感情が高ぶったからなのかその言葉が氷の剣のように胸に突き刺さった。 「ヨウ!そんな言い方ひどいじゃないか!私は君のことを心配して……」  違う! こんな言葉じゃ足りない……ヨウのことが気になってしょうがないんだ!    次の瞬間、私はヨウの両肩を勢いよく壁に押さえつけ、あろうことか唇を無理やり重ねてしまったのだ。先ほどから下半身から湧き上がる不思議な感情が抑えられなかった衝動から咄嗟に取った行動がそれだった。 「えっ!」  ヨウは突然の出来事に目を見開き、固まっていた。
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