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三日目の夜。★
夜に近づく時間帯。
この頃、ジャノルの日課に、王との寝室に向かう前の用意が加わった。夕食後、入浴を経て、王が寝室へ来るまでの間に行われる用意だ
「シーア、その、今日もするのか?」
まろやかな肢体を長椅子へ寝そべらせ、あちこちを専属の侍従にもみほぐされながら、ジャノルは問いかける。風呂というには長い入浴の間も、あちらこちらを香油でもみほぐされて、すっかり皮膚も体も柔らかくなっていた。
「いえいえ。陛下があそこまでなされるとなると……用意が足りませぬ」
「……そうか」
王の子種を受け入れるにあたり、ジャノルの体のつくりはすっかり変わってはいるが、如何せん、あの子種の量である。下手な用意で迎え入れると、ジャノルの腰が抜けたまま、戻らなくなる可能性があった。
というか、初夜の時は準備不足で腰が完全に抜けてしまい、今なお足を大股に開くのが難しいほど、骨盤に影響が出ている。
「これでは、御子をお産みになる時、苦しまれるのはあなた様ですので」
「……子も苦しい、ということか?」
「もちろんです」
「……分かった」
シーアの手にある一本の棒のようなものを見て、観念した様子でジャノルが膝を抱えるように左右に限界ギリギリまで足を開いて、長椅子の上へ腰かけた。そして、ジャノルの秘孔が侍従たちの前へ晒される。
ほっくりとほぐれたそこは、艶としとやかさに満ちていた。
「ん……」
その棒をシーアがゆっくりと差し入れて、指一本分残した程度で手を止める。
一見すると棒だが、とある植物の種である。水分を得ると膨張し、中にある種がはじけて、大きく膨らんでいくという性質があった。王族のみならず、けものびとの間では、体格差が大きい場合に子を孕む側が穴を広げるために使うことが多い。
「は、ぁ……」
侍従たちが待機しているのは、この種を引き抜く時が大変だからだ。そうでなかったら、ジャノルだって彼らの前でこんな姿はしないだろう。
「注ぎますよ」
「わかった……」
シーアの手にある水差しが、棒の横から体内へと、仄かな香りのついた藥水を注いでいく。とたん、中にある種がぼこぼこと音を立てて膨れ上がり、一気に内部が拡張された衝撃で、ジャノルの背がのけぞる。
「くぅ、うぅううっ……!」
その体が動かないように、侍従たちが布越しに優しく支えた。ぽこん、と膨らんだ腹部を涙目で見つめながら、ジャノルはじっと引き抜かれるのを待つ。
入らなかった分の種も水分を得たせいか、黒々と太い棒のようになって揺れているのが分かる。
(どう、しよう。陛下のは、これで、さらに、先端が膨らんでいるから……正直、足りていない……)
伝える言葉がうまく見つからず、ひとまずジャノルは引き抜こうとしたシーアに言う。
「ま、て」
「ジャノル様?」
「へいか、の。まだ、大きい、から……もっと……」
涙をにじませながら訴える王妃の姿に、侍従たちの目がどこか、生暖かいものになる。
(健気なお方だ……)
そんな認識で、彼らはこの王妃をいつくしんできたのである。
「……分かりました」
シーアが応え、水差しを今一度、傾けた。
「あ、ふ、ひあっ!?」
限界まで水を吸った種が、ぼくり、ぼくり、と音を立てて分裂し始めた。入りきらなかった分がめりめりと秘孔を押し広げて外へ出始め、その種がもともとは自然界で、大地へ落ちて水を吸った外殻を苗床にするように、床へ藥水を吸い込んだ分から落ちているのだ。
(この、大きさだ。……ほんとう、へいかの、は、大きい、から)
肩で息をしながら、ジャノルがシーアに言う。
「だい、じょうぶ。ぬいて」
ぐっとつま先に力を入れて、耐える用意をしたジャノルを見て、シーアが頷き返す。その指先が、分裂し始めた種にもぐりこみ、さらにその腹を上から軽く押した。
「くっ、ふぅ、うあ、あぁあぁああっ……」
長い息が、ジャノルの体の揺れと共に落ちていく。
藥水をたっぷりと吸い込んだ種が一つ残らず出るまでの間、その体は幾度となく痙攣し、跳ねて、衝撃の強さを物語った。
(へいかの、これでまた、受け入れても平気なように……なったはず)
そう思うとその衝撃さえ甘美に思えて、愛しくなる。
「ぁ、あ……」
ぐったりと長椅子に体を沈めたジャノルの汗を拭き上げて、侍従たちが慌ただしく動いていく。夕食後に入浴してから執り行うとはいえ、この後さらに王を迎え入れる必要がある。
「……ジャノル様、気付け薬はつかわれますか?」
「うん、おねがい」
ミリュア姫が訪れてから、三日目の夜となる。
ジャノルは小さな決意と共に、その夜を迎えるつもりでいた。
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