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それは、ミリュア姫が大学へと見学へ赴くのを見送った後のことだ。侍従を連れ、王宮の一室へ向かうケリャ王は、顔には出さずとも焦っていた。
「ラノルは?」
「すでに部屋においでです」
何時になく畏まった様子の侍従に言われ、ケリャ王は頷く。
部屋に入ると、ゆらりと二又の尾を垂らし、ラノルはソファにくつろいでいた。
西の辺境から王都までの道のりは長いが、彼はそれをほぼほぼ通常の二倍の速さでやってくる。伝令が出たら、もうその日には王都に到着すると言っても良い。
今回こそ例外だが、いつもはこの部屋でケリャ王が待っている側となる。
(待たせたこと、そればかりではない)
今までにない気持ちで、ケリャ王はこの定期報告を受けていた。
(今まで……どうして私は、あれほど凪いだ気持ちで、この方と接することが出来ていたのだろう)
それまではケリャ王も、ジャノルの元へ遊びに行ったという話をされても、何も感じなかった。
(それが今や、焦りで胸が痛いほどだ)
理由はただ一つ。
ミリュア姫にも言われたが、彼がジャノルの兄だからだ。
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