獣の誓い

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 祝いの言葉を浴びながら、ケリャ王はそっと尋ねる。 「そういえばゼラハ宰相。汝はつがいを妻に娶っていたな」 「はい」 「つがいとはやはり、妻にしたいほどの存在か?」  面白そうな声色で尋ねる彼に、宰相のゼラハが、顔を青ざめさせた。その視線が、一瞬だけ別方向へと向く。  それは、唯一、王と姫と同じ高さに位置付けられた、美しき座がある方向だった。  ほのかな笑みを湛えて、三角耳をぴこりと動かし、その座の主が言う。 「陛下。そうでなければ、堅物のゼラハが婚姻をするはずもないでしょうに」  楽し気に返す声は、なだらかで、どこにも角がない。声の主は、ケリャ王の現第一王妃であり、国母となる定めにある唯一の王妃であった。  豪奢な衣装をそそと揺らし、長い袖で口元を隠すように微笑む。翻るたっぷりとした衣に包まれた肢体は、雄であることを忘れさせるほど、どこまでもまろやかだった。  王妃のたしなめる言葉に、ケリャ王が笑う。 「その通りだったな。すまない、無理なことを聞いた、ゼラハ」 「いえ……」 「さて、フェマルの姫。我がつがい」  にこやかに微笑んで、王は言う。 「フェマルのこと、今少し聞かせておくれ」 「はい、陛下」  誰もかれもが穏やかに。  しかし、決して、ある1点に触れようとしない。  ケリャ王には、王妃が居る。  そこに見つかった、つがいという運命の相手。  果たして。最後に王が手を握るのは、いったいどちらなのか。今はまだ、誰にも結論を出すことはできなかった。
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