獣の誓い

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獣の誓い

 金銀螺鈿の細工が渦巻く、高貴な天井の下。  きらびやかな衣装に似合う顔立ちの男女が、身を寄せ合うように話をしている。 行き交う人は獣の姿と、人の姿の間の子のよう。鱗あるもの、毛並みあるもの、たてがみ持つもの、角あるもの、多種多様なもの達が、そこかしこに行き交う。  身を寄せ合う男女のうち、くすり、と、笑った女性のたれ耳が得意げにうごめいた。淡い黄色の垂れ耳は、ふっさりとして、彼女の頬の下に届くほど長い。  それを見て、穏やかな笑みを浮かべたままの男が、額より凛と伸びた一本角を彼女の髪へと滑らせて、親愛を表した。  二人の左手の薬指には、全く同じ文様がツタの葉のように絡みついている。それは刺青のように濃く、自然と人目を引いた。 けものびとには、本能により選ぶ、運命の相手。 唯一の存在。つがいという文化がある。 仲睦まじき二人は、そのつがいであった。  
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