最高の贅沢

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 炊き立てのご飯とみそ汁が待つテーブル、その中央へ今日の主役たちを連れて行く。透き通った脂身としっかり骨についた、ぷりんと張りのある肉が電灯に照らされている。テーブルに置くとゆさり、と重たく揺れた。三つのスペアリブ。精肉店で5分粘り、一番赤身がしっかりしていて、かつ肉にサシが入った美味しそうなものを選んだ。それに特製のたれを揉みこんで、一晩寝かせてから焼いたものである。  着席。視線がスペアリブに誘われてしまうのを耐えつつ、胸いっぱいに美味の匂いを吸い上げる。一瞬息を止め、それが体に染みていくのを感じてから手を合わせ、吐き出す。 「いただきます」  手掴みでがっと行きたくなるのをこらえ、まずはみそ汁を手に取る。煮干しと昆布の香りを楽しんでから、椀に口をつける。音を立てて啜ればうまみと香りが口の中で踊り、大根の甘みが熱く舌を包む。喉を通る温かさが胃を優しく整えてくれるのだ。これから来る、最高の一口に向けて。  今度こそ骨付き肉に手を伸ばす。熱い。必死に爪を立てて少しでも肉に触れる面積を減らしても熱い。きっとこのままかぶりつけば手ひどい火傷を負うだろう。息を吹きかけ、吹きかけ、熱さに指が耐えられなくなり一度皿に下ろし、肉の塊を睨む。  なんて手ごわい相手だろうか! こんなに美味そうなのに、やすやすと食らいつくことを許してはくれないのだ。息を吹きかけ生唾を飲み込む間に、美味しい匂いが嗅覚を刺激する。良く焼けた肉の香ばしい色が透明な脂をたらたらと垂らして、ああ! 待ちきれなくなってまだ熱い肉を掴んだ。指が痛みを感じる前にがぶりと食らいつく!
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