最高の贅沢

1/3
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

最高の贅沢

 骨付きのかたまり肉は歓喜している。オーブンでこんがり焼かれ、脂をてらりと流しながら。熱にジュウジュウと音を立てる肉汁と脂こそがその声だ。抑えようのない焼けた肉とハーブの芳香がすでにキッチンに充満している。残り時間はあと40秒。耐熱の皿を用意して待ち構える。焼き上がりのメロディが鳴る一瞬前にオーブンを開けた。ガツンと来る熱と脂の甘く重い匂い! あふれてくる生唾を飲み込む。脂がシュウシュウとはぜている。骨のあたりから押し出された空気はきゅうーとかわいらしく鳴いた。いい焼き色だ。  いそいそとトングで掴み、皿に盛る。掴まれた肉は自重でもったりと弧を描き、肉の柔らかさを主張している。透明な脂がするりと滴った。甘露をすすりたくなるのをこらえつつ、全ての肉を移動させると、オーブンのバットにはあふれ出た肉汁と脂が残されている。グリルでじっくり焼いたパプリカとそら豆、温野菜にしておいたブロッコリーのサラダにそれをかけ、めんつゆと少量の酢で作っておいたドレッシングと共に混ぜた。こんなになまめかしい野菜たちが存在するだろうか!  野菜の甘い香りと出汁の匂いが、キッチンに満ちている脂の匂いをそっとやわらげ、ほのかな酢の香りが鼻腔を洗い流してくれる。ああ、肉を、野菜を、早くこの口の中へ! 期待感。貪り食いたい、しゃぶりつきたいという欲求に胸が高鳴り、息が荒くなる。興奮が隠せないのだ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!