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はじめての贈り物
「はー……冬休み初っ端から補習とかホントついてねぇ」
最初に盛大な溜息をつきながら机の上で頬杖をついたのはクラスメイトの田原昭彦だった。
二学期も終わり、短い冬休みが始まった。三学期が始まるまでわずか二週間ほど。そんな貴重な休日に、制服を着込み学校を訪れているのには訳がある。
「仕方ないよねぇ……二学期からいきなり授業内容難しくなったし、ただでさえ文化祭とかあったしさー。中間より範囲も広かったし名前書いて出しただけでも偉いと思うの」
登校時に買ったと言っていたミルクティーはとっくに冷め、温くなっている。その小さなペットボトルから中身を一口飲んで、これまたクラスメイトの長濱亮平が「ふぅ」と息を零した。
二人のやり取りを、適当に右から左へと聞き流しつつ、黙々と自習プリントを解き続ける。なおも、二人の雑談は続く。
「それもそうだな。つか意外だったわ」
「なにが?」
「お前さ、なんでいんの?」
話の矛先が唐突に自分へと向けられた。二人からの視線を浴びて、思わずプリントの上を走らせていた筆記具の動きが止まる。
「なんで……って……英語が赤点だった……から?」
「いやいや、そういうことを聞いてるんじゃない」
昭彦の言葉の意図が汲み取れない。「なぜこの場にお前がいるんだ」と聞いてきたのはそちらではないのか? 頭の中に疑問符を浮かべていると、どうやらそれを察したらしい、昭彦は先程と同じように溜息混じりに頬杖をついて、じとりとこちらを睨んだ。
「明日クリスマスイブだぞ? 補習とか受けにきてる場合か?」
「言われてみれば。尚斗って頭悪くなさそうなのに赤点とか取るんだねぇ。親近感湧くわぁ」
昭彦の言葉にうんうんと頷きつつ、亮平も自分の思ったことを口にしてくる。〝頭が悪くなさそう〟というのは完全に外見からくる第三者側の思い込みだ。自分から〝頭がいい〟などと公言したことは一度もない。
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