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「すごい人気だったな」
「いやー……まさかあんな囲まれて質問攻めにされるとは思わなかった。部活でやってることやっただけだったのに」
「あんな遠くからシュートしてきっちり入れんだからすげぇよな。思わず魅入っちまった」
「練習すれば誰でもできるから……っていうか、いつから見てたの? 公園に来たら連絡くれれば良かったのに」
「すぐ見つけられると思ったから……案の定すぐ見つかったし」
子供達と別れ、公園内の遊歩道を二人並んで歩きながら他愛もない話をする。月冴はマスタードイエローのダッフルコートを着て、手には赤いチェックのマフラーを持っていた。
さきほどコートで使っていたボールはどうやら子供達の持ち物だったらしく、今日は小さなボディバッグに財布やスマホなど最低限の荷物だけにしていると言う。
冬の弱い日差しも浴びればそれなりに温かく、カーディガンの奥へと隠していた両手を覗かせながら歩いた。
奥へ奥へと続く遊歩道の先を見ると短い橋が姿を現した。間には小川が流れており、すぐ脇に東屋も見える。その東屋へ二人で身を寄せ、休憩がてらベンチに腰をおろした。
さきほどまで子供達とバスケをしていた月冴は、少し暑いのか一度はしめたダッフルコートのトグルを外し、手にしていたマフラーを自分の傍らに置くと、小さく息をついてこちらの肩に頭を擡げてきた。
今日は整髪料を控えめにしているのか、いつもはきっちりセットされている髪が幾分か柔らかい。肩を抱くようにしながら手を伸ばし、金糸雀色の髪をそっと撫でる。
「……疲れたか?」
「んー……そうでもないけど。なんか聞かれたら疲れたような気になってきた」
「……そうか」
へへっ、と悪戯な笑みを浮かべる月冴の髪に触れ続けながらポツリと一言返す。
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