はじめての贈り物

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「大丈夫。ちゃんと好きだから。俺は……尚斗がいてくれたら、それでいいから」 「……お前さ、ホント俺のことダメにするの上手いよな」  背中に回された月冴の腕が身体を抱きしめ、小さな手がポンポンとあやすように髪を撫でる。  己を受け入れて包み込む腕の中はとても居心地が良く、なにより安心感を齎した。かつての自分が喪ってしまったものが、ここにある。 「あの、さ……」  ようやく顔を上げてもう一度月冴を見ると、「なに?」──そう返事をして首を傾げる。 「いまさら、なんだけど……これ、貰ってくれる?」  スクールバッグの中を漁り、綺麗にラッピングされた箱を取り出して月冴の掌に乗せた。 「遅くなったけど、誕生日おめでと。来年は……ちゃんとその日に祝うから」  育ての親である泰正は別にして、他人にプレゼントを選んで渡すという行為はこれが初めてになる。気恥ずかしさから言葉の最後は尻窄みになってしまった。  俯かせた顔──頬が熱い。ちらりと上目遣いに反応を伺う。 「これ……俺に? 尚斗が選んでくれたの?」 「……お前に似合うと思ったから」 「開けていい?」  返事代わりにこくりと頷けば、月冴の細い指先が慎重に包装紙を開き始める。カサカサと包装紙の擦れる音が聞こえ、中から現れた白い箱の蓋を引き上げた月冴の──小さく息を飲む音が聞こえた。 「……綺麗」  中敷きにしたコットンの上から細身のブレスレットを丁寧に取り出すと、ベンチの上に箱を置き、掌の上に乗せてしげしげと眺め始めた。    どうしたのだろう? もしかしたら気に入らないのだろうか? そんな不穏な考えが脳裏を過る。 「……好みじゃなかった?」  自分自身が驚いてしまうほどストレートに言葉が漏れた。  物を選ぶセンスがずば抜けているならいざ知らず、そんなことはないのである。買って帰ってからしばらくは〝反応が悪かったらどうしよう〟などと無駄に杞憂していたくらいだ。そのくらい、選抜の腕には自信がない。 「まさか! 尚斗から誕生日プレゼントもらえると思ってなかったからちょっと感激してるっていうか……しかもこんな綺麗なやつ……嬉しすぎてリアクションがうまく取れない」 「そ、そうか……? そんなたいそうなモンじゃねぇけど」  順応性の高い月冴から予想外の言葉を聞いて面食らう。リアクションを忘れてしまうほど喜びに満ちてくれているのならなによりだが。
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