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「ねぇお兄ちゃん、またバスケしよーね!」
「今度は負けないよ!」
「わかった。しっかり練習しとけよー」
「うん! じゃあねー、ばいばーい」
月冴と再戦の約束をすると子供達は手を振って離れていく。彼らの姿が見えなくなると、どちらからともなく長い溜息が漏れた。
お互いに顔を見合わせ、同じタイミングで「ふはっ」と笑い声を吐き出した。
「いやぁ、参った参った。タイミング良すぎでしょ。変な汗かいちゃった」
「だな。まさかこっちから帰るなんて思わねぇよなぁ」
「ほんとにねー」
なんだかいつまでも可笑しくて、ひとしきり笑い合ったあともう一度月冴の方を見た。笑い泣き状態になってしまったのか、目尻に溜まった少量の涙を拭いつつ、視線に気づいた月冴もこちらを見やってくる。
冬の冷たい風が、覆うもののない頬や指先を掠めていった。
「仕切り直しても?」
「はい、どうぞ」
月冴の言葉を合図に肩を抱き、身体を引き寄せる。
互いの息がかかるほど近く寄せ合った顔。視線を交わして見つめ合って、小さな声で「好きだよ」と囁いて。重ね合った唇が、互いの熱を帯びて温まる。
「……、えへへ。なんか照れくさい」
「……言うな、余計恥ずかしいわ」
幸せそうに微笑む月冴の髪をわしわしと掻き回してからこつりと額を合わせると、再び月冴から「へへへー」と気の抜けた笑い声が聞こえた。
ふと思い出したかのように傍らに置いていた箱を手にすると、コットンの上に置いていたブレスレットを手に取りこちらに差し出してくる。
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