はじめての贈り物

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「尚斗がつけて?」 「いいけど……帰ったらまたはずすんじゃないのか? 面倒じゃねぇの?」 「そういうのはいいんです。だってさぁ、初めてのプレゼントだよ? つけたいじゃん?」 「……気に入ったんだ?」 「気に入らない理由がないよね」 「そうか」  ブレスレットを受け取り、アジャスターつきの留め具を外す。開いたブレスレットを左手首に沿わせ両側から合わせるようにして留めてやる。  案の定、一番詰めた状態で留めても、手首とブレスレットの間には指一本入るぐらいの余裕があった。  自分も人のことをとやかく言えた体格ではないが、月冴はその比じゃない気がする。持って生まれたものだろうと思うことにして、この場に似つかわしくない言葉は喉の奥へと押し留めた。 「ありがと。大事にするね!」  手首を返しては戻し、掲げるように上げては引き寄せて。色々な角度からブレスレットを嬉しそうに眺めている月冴を暫し見つめる。 「……やっぱり似合うな」  手首で揺れる瑠璃色の一粒石を見ていたらぽつりとそんな言葉が漏れた。  相手を想い、その人の為になにかを選ぶ──初めての経験が実を結ぶ。  それがこんなにも嬉しいことだとは。心の奥がざわめく。 「なぁ、月冴」 「なに?」  名前を呼ばれて挙動を改めた月冴がこちらを見た。  宝物を手にした無垢な子供のようなきらきらとした目で見つめられると、こんなことを言うのも照れくさいが、ここまできたらもののついで──いや、前進あるのみ、だ。 「明日、さ……」 「どこかお出かけしませんか?」──そう言いながら傅くように手を取って、白く細い指先をそっと包み込んだ。
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