はじめての贈り物

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「月冴、へこんでんじゃねぇの?」 「……月冴? あぁ、〝もう少しちゃんと勉強教えとけば〟──とか言ってたな」 「いや違うそこじゃない。尚斗ってもしかしてイベント疎い系?」 「はて?」と言わんばかりの顔で昭彦が尋ねてくる。先程も彼からはクリスマスイブという言葉を聞いたばかりだが、それがなんだというのだろう。  たしかに街中にはそういった催しを意識したカップルの姿が多く見受けられるようになってきたが──。 「──……ぁ、」 「やっと気づいたか。つか、その調子じゃお前、月冴の誕生日もすっぽかしたろ?」 「え、なに? 尚斗、月冴の誕生日知らないの? マジで? そりゃマズイよー」  昭彦のセリフを聞いた亮平が矢継ぎ早に告げてくる。そういえば、月の初め、月冴から何度か連絡をもらっていたことを思い出す。    あれはたしか五日頃で、その日は日曜だった。  前の日に夜ふかしして新刊を読み耽っていたおかげで、早朝の記憶が曖昧だがその時分から月冴とメッセージのやり取りをしていた気がする。  気になってスマートフォンをカーディガンのポケットから取り出し、メッセージアプリを起動するとトーク画面を開く。  日付検索をかけるとやはり早朝から月冴とメッセージをやり取りしている記録が残っていた。他愛もないやり取りに見える一連の流れをよくよく追ってみれば、「出かける予定はないのか」という質問に対して「夜ふかししてしまったからこれから寝る」と返信している。おそらく、月冴はこの一言を見て、これ以上誘いをかけても無駄だと察したのだろう。「ゆっくり寝てね」──その一文でトーク画面は途切れていた。  画面を覗き込んでいた二人は、きょとんとした顔を見合わせてからこちらに顔を寄せてきた。 「……お前ら、仮にも付き合ってんだよな? 普通さ、好きなヤツの誕生日って把握してるモンなんじゃねぇの? なにナチュラルにスルーしてんだよ」 「…………だってアイツ言わねぇから」 「〝聞かなかった〟の間違いじゃないの? 月冴って尚斗には甘いっていうか優しいっていうか、〝尚斗だし仕方ないかな〟って思ってる部分もあるっていうか?」 「俺だから仕方ない?」 「本当に好きなことにしか興味を示さないところとか。尚斗ってさ、人の顔と名前覚えるの超苦手じゃん? それと同じカテゴリーっていうか……人の中身に興味が薄いっていうか。他人のパーソナルデータなんて実はどうでも良かったりしない?」 「そっ……んな……ことは……」  亮平の言葉に思わず口ごもる。
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