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月冴と付き合うまでは本当に他人に興味がなく、ただ心の隙間を埋めるためだけの付き合いを重ねていただけだった。
年齢がどうとか好みがどうとか、そんなことを意識することすらなかったのだ。月冴と出会い朔夜達と知り合い、いまは彩斗だけではなく昭彦や亮平と会話、延いては友達付き合いまでできるようになった。以前からしてみたら大きな進歩である。
が、特に付き合いが深くなったかというとそういうわけでもない。しいて言うなら名前を間違えなくなったことぐらいだ。
「ちなみにさ、尚斗は誕生日になにか貰ったりしたのか?」
「……当日はどうしても外せない用事があって……学校で会った時にマグカップ貰った。なんだっけ……冷めにくいやつ。どっかの限定デザインとか言ってた気がする」
昭彦の問いかけに記憶の糸を手繰り寄せ当時のことを思い出す。
紅葉のプリントを背景に木の実を持ったリスのシルエットが描かれている蓋付きのマグカップを月冴から受け取った。
月冴と付き合うようになってすぐの頃、朝のテレビ番組でやっている星座占いの話を月冴からされたことがあった。その時、誕生日を聞かれた覚えがある。その後「温かい飲み物を淹れても本に夢中になっている間にすっかり冷めきってしまう」と彼にこぼしたことがあり、それが誕生日プレゼントの決め手になったと月冴が話してくれた。
「あー、マークタワーの秋冬限定デザインサーモマグでしょ? 四季は春夏と秋冬で出て人気なんだよねぇ。うちもおねぇがそういうの好きで買いに行ってたなー」
「自分はちゃっかり貰ってんのに相手にはナシとか……お前、フラれるフラグ立てまくりじゃねぇか」
「昼に学食でお礼のイチゴ牛乳奢った」
「はぁ!? よくそんなんで許されてるな……さすが月冴。優しさが菩薩級」
昭彦が素っ頓狂な声を上げる。あまりの大声に顔を顰めて少しだけ上半身を引いた。とても煩い。
「……? こういうのは気持ちが大事だってじーさんがいつも言ってるぞ?」
「ま、そりゃそうだね。月冴からしたら、たとえ自販機のイチゴ牛乳でも好きな人がお返しにくれた物だし嬉しいんじゃない? とりあえず、誕生日の分と合わせてクリスマスは大盤振る舞いしたら?」
「……大盤振る舞い……」
亮平の言葉を反芻してみる。
そうはいっても、一体なにをプレゼントすればいいのだろう。
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