はじめての贈り物

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 月冴は自分と違い、常に温かい飲み物を飲んでいるわけではないから、マグカップを貰っても持て余してしまうかもしれないし、かと言って、自分がいま一番夢中になっている科学捜査ミステリー小説の第一巻というわけにもいかないだろう。すでに十巻まで発売されているから揃えるのも手間になる。  考えあぐねていると、ふと視線を感じて顔を上げる。視線の先には少しだけ難しい面持ちを浮かべる昭彦の姿。  視線を交わすなり「はぁ……」と盛大な溜息をつき、びしり、と人差し指をこちらの鼻先へ突きつけてきた。 「もうイチゴ牛乳じゃダメだかんな?」  月冴の反応はともかく、下手なものを渡したらあとが面倒だと、目に見えぬプレッシャーがズシリと両肩にのしかかった。 * * * * * 「……で? なんでオレなんだよ、明らかに人選ミスだろうが」 「……そうだけど。アンタが一番近い気がしたんだよ……無頓着さみたいなのが」 「あ?」 「……なんでもない」  年末まであといくらもないためか、道路の舗装工事も大詰めのようであった。資材を路肩に置いた朔夜が着ているTシャツの襟首を引っ張り喉元の汗を拭いながら振り返る。  補習を終え月冴への贈り物を思案しながら足を向けたのは、朔夜がアルバイトをしている工事現場だった。学費を工面するために色々なアルバイトをしている朔夜だが、舗装工事のバイトは中期から長期期間の重労働ということもあり実入りもいいらしい。冬休み前、校内で顔を合わせた時に、年内は勤務していると言っていたのを覚えていて良かった。  バイトを終え帰り支度をした朔夜と共に近所のコンビニに寄り、以前立ち寄った公園へと向かう。ベンチに並んで腰をおろし、朔夜が炭酸水と一緒に買った肉まんを食べ終えるのを待って話を再開した。
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