はじめての贈り物

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「アンタなら先生になにをあげる?」 「っつてもなぁ……アイツが喜びそうなモンなんか知らねぇし。いや──知らなくはねぇか。煙草とか?」 「聞いた俺が馬鹿でした」 「聞いといてその言い草かよ。だから人選ミスだっつったろうが」  理不尽だと言わんばかりに、朔夜は肉まんの包装紙をくしゃりと丸めてから近くのゴミ箱に放り込む。 「好きなヤツから貰うんだったら飴玉一個でも嬉しいんじゃねぇのか?」 「そう思ったんだけど……それじゃダメだって。誕生日すっぽかしたんだからクリスマスに合わせて大盤振る舞いしてやれって」 「大盤振る舞いって……叩き売りかよ」  朔夜の言葉にますます頭を抱える。  そもそも、他人になにかプレゼントするという行為に慣れていないのだ。そう簡単に品物が決まるわけがない。 「アンタは先生からなにか貰ったことある?」  少しは参考になる話が聞けるかと話の矛先を変えると、朔夜が一瞬黙り込む。 「黙るってことは、やましいものでも貰ったの? それとも貰ってすらないとか?」 「まず煙草だろ……それから、アイツんちの合鍵と……住所と携帯番号書いた名刺を」 「へぇ……意外だな。先生なら〝卒業するまで親密な関係はちょっと……〟とか言いそうなのに。信頼されてんじゃん? さすがに合鍵は渡せねぇけど、アクセサリー系はアリか」  自分と違い月冴は日常的に使用しているアクセサリーこそないものの、私服の時は比較的小物を多用している。そういった時に使えるちょっとした装飾品を贈るのは十二分にありだろう。
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