はじめての贈り物

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 よくよく聞いてみれば自分と同じ年頃の異性のようで、どうやら複数で来店しているらしい。やれ「これがカワイイ」だの「そっちの色が好み」だのと、甲高い喋り声が耳に入ってくる。  女性不信の気があるから異性の声など聞くに耐えないのだが、相手が同じ年頃となると話は別だ。財布事情など学生ならば大して差があるとも思えない。つまり、彼女達が商品を吟味しているという観点から、この店にある商品は比較的リーズナブルな値付けがされていると推測できる。  こういう時の勘は、案外、外れないものだ。いくらも経たないうちに店内から人が出てくる。制服を纏った彼女達は、手にした包装用の小袋を握りしめ、嬉しそうな面持ちを浮かべて、やっぱり先ほどと同じように甲高い声でお喋りをしながら、駅の方へ去っていった。  もう一度店内の様子を伺うと、狭い中には店員以外おらず、入店しても問題なさそうである。素知らぬ振りで店内に足を踏み入れると気配に気づいた店員が「いらっしゃいませー」と声を上げる。一瞬だけびくりと肩を震わせてしまったが、気を取り直して足早に商品棚へと近づくと、綺麗に陳列されたアクセサリーを一望する。  月冴はもともと見栄えのする容姿をしているからどんなものでも似合うだろうが、せっかくなら気兼ねなく使ってもらえるものがいいだろう。  肌の色が白いから、金属製の物より柔らかい印象のスウェードやアンティークな印象のレザーなんかがいいかもしれない。  思案しながら商品棚を視線で追うと、端の方にブレスレットを集めた一角があり、その中にベージュのスウェード革紐と細身のゴールドチェーンをあしらった二連のブレスレットがあった。中央に瑠璃色の石が嵌った小ぶりのチャームがゆらゆらと揺れている。 「これだ」──直感的にそんなことを思い、目の前のそれを手に取った。華奢な作りでありながらも、柔らかな印象を残すブレスレット──素直に、月冴に似合いだと思った。服装のセンスもよく装飾品の取り合わせも上手いから、このくらいシンプルな方が使い勝手には困らないだろう。  手にしたまま真っ直ぐレジに向かい、カウンターにブレスレットを置いた。バインダーに挟んだ在庫表らしき用紙に視線を落としていた女性店員が、気配に気づいて顔を上げるとふわりと微笑んで「お預かりしますー」と告げてきた。
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