はじめての贈り物

9/17

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 補習最終日──クリスマスイブ当日。  抜き打ちで小テストが行われたが、なんとか乗り切り補習を終えて月冴に約束を取り付けるためメッセージを送ると、学校からほど近い公園にいると返信があった。  綺麗に舗装された大型の公園で、小さいながらもテニスコートやスケートボートのコースもあり、スポーツイベントや市民祭りなども開催されたりしている、地域に住んでいる人間は一度は訪れたことのある公園だ。  かくいう自身も、学校帰りに立ち寄り、ベンチで本を読んで帰ったこともある。足早に学校を出て公園に向かうと月冴の姿を探した。  奥まった場所にフェンスに囲まれたコートがある──そこから子供達のはしゃぐ声が聞こえてきた。 「いけー、負けるなー!」「しっかりー」──興奮した様子で声援を口々にかけながら子供達はコートを囲んでいる。背丈からして小学生くらいだろうか。男女合わせて七人ほど集まっているその後ろから近づいて、一同の視線の先を追うと、ひときわ鮮やかな色彩を放つ金糸雀色の髪が視界に飛び込んできた。  蛍光イエローのハイカットスニーカーにダメージ加工の施してある黒のスキニー。上着は脱いだのか、淡色の長袖シャツの袖は肘関節の辺りまで捲りあげられている。どうやらコートにいた子供達に混ざってスリーオンスリーをやっているらしい。俊敏な動きでパスを連携し、相手のゴールに向かってボールを運んでいく。 「お兄ちゃん!」  子供が投げたボールが直線を描いて月冴の手に渡ると、あっという間に相手チームの二人から行く手を阻まれてしまう。 「ぜってー抜かせねぇ」 「へぇ……でも、二人で足りっかな?」  2対1という不利な状況にありながらも、月冴はそれすら楽しむかのように軽口を叩き、さらには笑顔まで垣間見せている。そんな姿が、眩しい。  身を屈め、フェイントをかけ、見事相手を出し抜くとそのままリズミカルにドリブルをしながらゴールへ向かって一直線に駆け出す。  その身のこなしと、彼が纏う空気に魅入られて、気がつけば声を発していた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加