8人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
源太郎がしかめっ面でそう言うと
彰と呼ばれたそのヤクザは
片方の口角だけ上げて
ニヒルな笑みを浮かべながら
源太郎に話しかけた。
「まぁ…そう言うなよ親っさん。
俺は腹減ってんだ。たぬき蕎麦くれよ」
源太郎は渋々とした様子で
蕎麦の麺を茹で始めた。
「おめぇにはタダ同然で何杯蕎麦を
食わしたか分からん…
ヤクザってのは勝手なもんだな」
ぶつくさ文句を言いながら
器に蕎麦つゆを注ぎ、麺を盛り付け
具材に揚げ玉/ワカメ/長葱/蒲鉾を加えると
源太郎はカウンター越しにたぬき蕎麦を
彰に差し出した。
季節はこれから冬に向かう11月中旬。
蕎麦を盛り付けた器から湯気が立ち上る。
最初のコメントを投稿しよう!