最後のお客

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源太郎がしかめっ面でそう言うと (あきら)と呼ばれたそのヤクザは 片方の口角だけ上げて ニヒルな笑みを浮かべながら 源太郎に話しかけた。 「まぁ…そう言うなよ(おや)っさん。 俺は腹減ってんだ。たぬき蕎麦くれよ」 源太郎は渋々とした様子で 蕎麦の麺を茹で始めた。 「おめぇにはタダ同然で何杯蕎麦を 食わしたか分からん… ヤクザってのは勝手なもんだな」 ぶつくさ文句を言いながら 器に蕎麦つゆを注ぎ、麺を盛り付け 具材に揚げ玉/ワカメ/長葱(ながねぎ)/蒲鉾(かまぼこ)を加えると 源太郎はカウンター越しにたぬき蕎麦を (あきら)に差し出した。 季節はこれから冬に向かう11月中旬。 蕎麦を盛り付けた器から湯気が立ち上る。
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