代用グラタンです。

2/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「代用グラタンです」とエージが差し出してきたが、普通のグラタンと何が違うのか分からなかった。  ホワイトソースを焦げたチーズが覆っていて、見た目はレストランで出てくるものと何ら相違なんか無い。いただきます、とおれはフォークを突っ込んだ。  ミートボールが入っていたのに驚いた。それを引き抜くと、後を追うように引っ付いたチーズが、うにょんと伸びた。  口に入れた瞬間、ジュワっと肉汁が舌一杯に広がった。その後、チーズの濃厚な味と、トロトロのタマネギの甘味が次々と舌を襲ってくるではないか。  下に敷き詰められたのは、折れたパスタだった。スプーンに乗せてみると、やはりそこにも絡まったチーズが伸びている。  チーズのモッチモチの食感の中で、弾力のあるパスタが別の方向から主張する。しかも味付けがカルボナーラだから、濃厚なソースの味がクソ旨えでございます。  ミートボール、タマネギ、チーズの絡んだパスタを一気に口にする。肉汁ジュワリ、トロトロのタマネギ、モッチモチのチーズ。こんな料理を食えるなんて、おれは世界一、幸せな男子高校生なんじゃないかって思った。 「シェフを呼び給え」 「目の前に居る」  おれの渾身のギャグは、目の前の男にあっけなくスルーされた。悔しいので、もう一度。今度はブラックジョークを、挟む事としよう。 「おれ、サンタへの願い事は決まった」 「んー」  エージは興味無さそうに、ミートボールを口に運んだ。このギャグを言えば、その詰まらなさそうな顔も大爆笑へと変わるだろう。 「エージを女にしてもらう」  目の前の男は大きくため息を吐いてから、フォークを置いて満面の笑みを浮かべた。来るか、大笑い。 「僕はの願い世界征服にして、その野望を打ち砕いてみせるよ」  おれはエージの言っている事が、よく分からないって思った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!