第二章 仕事場で

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第二章 仕事場で

       SE 靴音(パンプス) 紙袋の音 奏 (遠くで)おお、またな。気を付けて帰れよ。    ん? そっか、楽しかったか。良かったな。    次はもっと楽しくなるかならな。    SE 靴音(奏を見つけ近寄る) 奏 さよならー。   あれ? お前…。   ああ、今終わったところだよ。可愛いだろ、俺の生徒たち。   あはは! だからお父さんみたいはやめろって。   お兄ちゃんだよ、あいつらから見たら。 奏 お前は? ああ、今日は土曜だもんな。休みか。買い物でもしてたのか?   そっか。   …なあ、この後時間あるか? 腹減ってる? ちょっとか。   うん、ちょうど良いな。じゃあ、中でちょっとだけ待っててくれねえ?    良いものやる。   大丈夫だよ。もう俺しか残ってねえから。子供たちもみんな帰ったし、   他のコーチは商店街の祭りの手伝いに行った。俺も戸締りしたら終わり   だったし、ちょうど良いからさ。いいから! ほら、入った入った!    SE 靴音 扉が閉まる音 奏 そこで靴脱いで。ロッカー適当に使ってくれ。廊下の突き当りにベンチあ   るから、そこで座って待ってて。    SE パンプスをロッカーに入れる音 廊下を歩く足音              ベンチに荷物を置き 座る 奏 (重いものを持ち上げる)よっと…   ああ、大丈夫。すぐ用意できるから、そこで待ってろ。    SE 大きな荷物を運んでいく (折り畳みテーブル)    SE 主人公 びっくりする衣擦れ音 奏 ああ、ごめん。突然電気消したから驚いたか? でもこの方が綺麗だし   さ。こっち。来てみな。    SE 立ち上がりついていく (並んで歩く足音)    SE スリッパを置く音 奏 これ履いて。下濡れてるから。    SE スリッパを履き 並んで歩く足音 少し行き立ち止まる 奏 ほら、綺麗だろ? この時間、ちょうど夕日が窓から差し込んで、プール   がキラキラ光るんだ。足元の灯りはついてるから大丈夫だと思うけど、   転ぶなよ。 奏 あそこ座って。そう、テーブルのところのベンチ。   良いもの持ってきてやるからさ。    SE 足音 ベンチに向かい 座る    SE その場を離れる足音 少しして戻って来る 奏 手元に明かりいるかと思ったけど、蝋燭くらいしかなかったわ。   まあ、いいか。    SE テーブルにトレーを置き 隣に座る 蝋燭に火を灯す 奏 そ、ケーキだよ。商店街の人が持ってきてくれたんだけど、甘いもの得意   じゃない先輩がいてさ。その人のと俺の分とでちょうど二つあるから、   一緒に食おうぜ。 ああ、食ってくれた方が助かる。日持ちしないし。 奏 苺ショートとチョコケーキ、どっちがいい? ん、じゃあ俺はこっち。    SE お皿、コーヒーカップをテーブルに置く    SE カップにコーヒーを注ぐ音 奏 インスタントだけど、このコーヒーも結構美味いんだ。   砂糖とミルクもあるから、適当に使って。    SE スプーンでコーヒーを混ぜる音 お皿とフォークの音 奏 おう、いただきます。   (食べる)ん。結構美味いな。甘ったるくないからこれなら食えるわ。   ケーキなんて久しぶりだな。   ああ、商店街のケーキ屋のだな。なんか人気店らしいぞ。   そう、この2種類なんか昼前には売り切れるんだって。   お前、ラッキーだな。 奏 ふふ…。ん? ああ、悪い。美味そうに食ってるなーって思って。   昔から甘いもの好きだったもんな。よく購買のプリン食ってただろ?    知ってるよ。いつも幸せそうに食ってんなーって思ってた。 奏 ん? 祭り? ああ、毎年やってる夏祭りだな。   何かと力仕事が多くてさ、いつもこの時期は手伝いに行ってるんだよ。   もう来週だしな。あれ? お前知らないの?   先月って…そんな最近引っ越して来たのか。   だから今まで会わなかったんだな。 奏 ああ、面白いよ。神社の境内に夜店も出るし、少しだけど花火も上が   る。   …行きたいけどって、何? 一緒に行くやつ? 彼氏とか誘えばいいん   じゃねえ?   なんだ、いないのか。…じゃあ、俺と行くか? 当日は手伝いとかない   し。 彼女がいたら誘わねえよ。ん。じゃあ決まりな。 奏 土曜日だけど、仕事は休みか? 俺は通常勤務だよ。けど子供たちも祭り   行きたがるだろうから、早めに終わると思う。ああ、去年もいつもより早   めに帰してたから、今年もそうじゃねえかな。   終わったら連絡するから、待ち合わせて行こう。駅前だと人が多いし…   ここの前でもいいか? ああ、入ってきて構わない。戸締り当番、俺だ   し。   連絡先? 高校の時と変わってねえけど。お前もか。   はは。確かに。変えるのもめんどくせえしな。    SE お皿にフォークを置く 奏 あー、美味かった。おう、ご馳走様でした。   コーヒー、おかわりいるか? ん。    SE カップにコーヒーを注ぐ音 奏 引っ越してすぐなら、まだこの辺詳しくないんじゃないか? だよな。   まあ、東京っていってもこの辺は古い町だし、地元の人が多いんだ。俺も   祭りのお陰で顔なじみが増えたし、住み心地は良い町だと思うぜ。みんな   良い人だしな。 奏 俺は上京した時に借りた部屋のままだから、6年だな。   ここは元々大学の時にバイトで入って、そのまま就職させてもらったんだ   よ。担当してた子供たちもいたし、仕事楽しいしさ。   まあ、正社員になったらやることは増えたけど、その分やりがいもある   し。 奏 お前は? 仕事楽しい? うん、へえ。後輩の指導か…。   高校の頃から責任感は強かったしな、お前。 でもあんまりなんでも背負   い込むなよ。出来ることどんどん振ってやらないと、後輩も成長しねえだ   ろ。   そうだよ。任せられないってのは、相手のことを信用してないってことだ   と思うぜ。   …そんなことないなら、任せてみろよ。チェックとフォロー入れるのさえ   怠らなかったら、大丈夫だよ。 奏 俺は、先輩に仕事任せてもらった時嬉しかったな。   『この人に認めてもらえたんだな』って思ってさ。うん、尊敬してる人だ   しな。   だから期待に応えたかったし、勉強になることが多かった。   ああ、よく見ててくれる人だから、問題になる前にアドバイスくれるん   だ。でも仕事はちゃんと俺にさせてくれる。   お前なら、それ出来ると思うけど。 奏 後輩も、別にめちゃめちゃ手がかかるって訳じゃないんだろ? うん…。   一生懸命さが感じられない? うーん…表に出ないタイプなのか?   だったらなんか任せてみたらいいじゃん。簡単にできることばっかりだか   ら、一生懸命になれないのかもよ?   ああ、どういたしまして。上手くいくといいな。 奏 ん? あはは! まあ、俺だって成長するさ。いつまでもガキじゃない   よ。   あー、してたな。お前の反応が面白かったから、ついな。 はは! 悪   かったって。今はもうしねえよ。流石に、女をビビらせて楽しむのは最低   だって分かってるよ。 奏 さてと。そろそろ片付けるか。暗くなってきたし、送るよ。   いいのか? 助かる。受付の奥の事務所にキッチンがあるから。   俺もここ片付けたら手伝うよ。    SE 食器を片付ける音 FO
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