いま、空色の幕が開く

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 田舎の母親ネットワークとは恐ろしいもので、地元との縁なんて碌に残していない私なんかよりも、よっぽど早く同級生たちの情報が伝わってくる。 『みいちゃんが結婚したらしいわよ』 『かずちゃんは里帰り出産するらしいわよ』  意図的に切った縁につられたのだろうか。  かつて部活内でライバルだったみいちゃんとも、いつか腹を割って大喧嘩したかずちゃんとも、いつの間にやら連絡は取り合わなくなっていた。  結婚、出産といえば、人生の大きな転機だ。結婚式に呼んでもらい直接会って祝福するどころか、彼女たちから知らせてもらうことすらない。  疎遠になってしまったことは半ば自業自得とはいえ、母から情報が届くたびに一抹の心許なさを覚える。  けれど、今朝だけは違っていた。 『浅見くんが上京するらしいわよ』  いつも通り満員の地下鉄で運ばれている私の元に届いたのは、いつもと同じ母親ネットワーク情報。  なんてことはない、日常の一場面。  だというのに、心臓が音を立てて駆け出した。  浅見くん――浅見圭吾くんは、保育園で出会い、その後は小中高校と同じ学校に通っていた私の幼馴染だ。  過疎化の進むうちの地元では、保育園から高校まで一緒だなんて別に特別なことでも何でもない。  けれど心臓は大きく脈打ち、彼が特別だと告げてくる。  なぜなら彼こそ、私が高校時代に片恋を拗らせていた相手だったから。
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