護堂先生の芋掘り怪綺譚

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 そして西園寺先生が、文化祭で歌う曲をまるでオペラ歌手のように歌いだすと、体に絡みついていた蔓草がゆるくなり、地面に落ちるのが見えた。  私はそれを確認すると、すぐに彼の元に駆け寄る。 『素晴らしかったです! 立てますか?』 『OK! 君の言う通りだったね!』  西園寺先生がにこやかにハグをしてきたのをかわすと、私は中山さんらしき男性に近づき、声をかけた。 『大丈夫ですか? 中山さん……ですよね?』  男性は意識を取り戻すと、私を見てから驚いた様子で辺りを見回した。 『え、ああそうだが、なんで俺はこんな森の奥に……畑の近くに妙な穴が空いていると聞いて来たんだが、急に体が動かなくなって……』  中山さんは、気を失ってから、ここまで引き摺られて来たようだ。少し衰弱しているが、私と西園寺先生で肩を貸して歩き、森を抜けてさつまいも畑の場所まで案内してくれた。  不思議な事に、畑はあの近道より中山家に近い場所にあった。 『あれ? 中山さんのお父さんから貰った地図を見間違えたのかな?』  私はポケットを探るが、紙切れは見当たらなかった。穴に落ちた時にでも、落としたのだろうか。 『え、親父に会ったって? 親父は今入院中で、家には居ないはずだけど……』  私と西園寺先生は、顔を見合わせる。 『どうやら呼ばれたようじゃの』  ニヤリとする神様の横で、私は再び背筋を凍らせていた。
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