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僕たちは毎日、ゆるく長く続く坂道を降りて小学校に向かう。
十三人で歩く登校班で、いつも隣には同級生の朱音が歩く。朱音はこの登校班で、ただ一人の同級生だ。僕より少し背が高く、いつもサラサラの長い髪を首の後ろで束ねている。
僕はいつものように昨日もやりこんでいたゲームの話をする。
「リョウタは、ゲームの話をしてる時が一番楽しそうだね」
朱音が笑う。
違う。
と僕は思う。僕は朱音と話している時間が一番楽しいのだ。
近所でただ一人の同級生であることもあって、小さな頃から僕と朱音は一緒に遊ぶことが多かった。朱音もRPGが好きだったので、公園の裏山をゲーム内のダンジョンに見立てたり、近所を謎解きの舞台に設定して、冒険ごっこをしたこともあった。
さすがに五年生になった最近はそんなこともしなくなったけれど、僕と朱音はゲームの話を毎日のようにしている。
そんな朱音だけど、なんだか最近、元気がない気もする。その辺について聞いてみると、
「そんなことないよ?」
と少し首を傾けて朱音は言う。その傾きが、これ以上の追求を許してくれないように思えた。小学五年生には小学五年生なりの事情があるのだろう。
もっと、いろいろ話してくれたらいいのにと僕は思うけれど、悠太兄が、
「男は、女が話そうとしないことを無理に聞き出しちゃダメだ」
と言うので、朱音にこれ以上の探りはやめておくことにした。
彼女のいる悠太兄の意見は、たぶん正しいんだろう。
毎日、朱音と話せるならそれでいい、そう思うことにした。
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