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ヒカルゲンジが座に落ち着きますと、ケンキチは呼び鈴を鳴らしました。
暫くして待ってましたとばかりに慌ただしい足音と共に縁側に物見高い女中が現れまして敷居に額ずいて顔を上げるや興奮の余り声を上ずらせて言いました。
「ご、御用件は、な、何でございましょう!」
この女中は一ヶ月に一回やって来る美しいヒカルゲンジを咫尺の間に意識して半端でなく興奮しているのです。
「ヒカル様がお呼びだとサナエに伝えなさい!」
「ひ、ヒカル様がですか!」
「そうだ!」
「は、はい、畏まりました!」
果たしてドタバタと慌ただしく立ち去ると、ヒカルゲンジが言いました。
「あの女中はこの風流な場を乱す者ですね。」
「はあ、風流とは申し兼ねますが、不束者には違いございません。」
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