2 カーゴベルタワー、エビフライ、シルエット

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2 カーゴベルタワー、エビフライ、シルエット

吹き抜けになっている高層マンションの上階、 その吹き抜けを囲んで何人かが輪になってしゃがんでいる。中央で、 「皆さんつらいでしょうが…」 と、事務的なアナウンス。傍らに目を向けると、 女性が上半身を裸にして局部を赤巾で覆っている。 顔を手で隠して俯いている見知りの女性もいる。 肌は白く張りがある胸の先端が上向きにツと立っている。 スミはどんと構え恥らいなく落ち着いている。 お腹が二級に分かれている。 幼馴染のガキ大将が吹き抜けに身をのり出し、 とび職よろしくコイノボリとかポーズをとっている。 いつ落ちてもおかしくない危うい均衡で成り立っている。 浮いているようにも見える。 大学の学食。机がところ狭しと並んでいる。 スミと歩いていると、スミの知り合いと会う。 男はなれなれしげにスミに、 「おうスミ、何かやってくれよ」 「うんいいよ」 人が集まってくる。 俺はスミだったら歌でも歌えばいいだろうと、 少々すねて先に見ずに帰る。 引き受けたことが気にくわず、先に帰ると言えば スミもやめて帰ると思ったがスミは来なかった。 部屋。同期が上の階で台本にしがみついている。 スミが帰ってくる。 まぶたに紫のシャドーを入れて派手になっている。 「ただいま」 一仕事終えた感じだ。 …… スミの部屋。ムトツさんが訪れる。 迫力が前面に現れてはいないが、たたずまいがある。 風流な感じがする。髪はぼさぼさ。特有の八の字目。 まぎれもない。無言でコタツに入る。 どうしようということもなく、その存在を確かめる。いる。 ムトツさんが、食物を出してくれる。 あらびきポークビッツといった趣で、少々衣がついている 申し訳なさげに尾のようなヒレがついている。 「これ何ですか?」 「何だ知らんのか、エビフライだよ。」 はあ、エビフライは知ってるけど… 食す。 「へぇ、何か香ばしくておいしいですね。」 「だろう。」 満足した様子。 洗面所に顔をゆすぎに行く。スミが来る。青の雰囲気がする。 寝巻きのズボンの中に手をすべりこませ、 尻、尾てい骨(尻尾)の辺りをまさぐる。 気持ちはいいが、まずいだろう。乱れている。 …… 道路をはさんでコンビニ 建物は低く、アイスクリームの器のかたちになっていて (シルエット) よいやみで 言い争いの声 建物の天井に上るか否かの縁のところで、くんずほぐれつしている人影があり、俺とスミは、吸い込まれるように道路を渡り、店へ向かう。 店の前にはちらほら10から20ほどの野次馬達か、円弧を描いて距離をとって見守っている。 「よーし、今来たやつも含めて集めろ、誰も勝手に逃がすなよ!勝手な動きも許すなよ!それなら!」 「ああ、もちろんだとも、一人たりともだ、」 近づけばよくないであろうことを胸に抱きつつ、ひかれるように店に来て、 予想通りというか、スミは、言う通りに並ぼうとして円弧の中の方へ進んでいく。 言い争っている男はナイフを持っている。 あれを奪うと仮定して、どうする?いきなり不用意にいってはいけない。 まず、気を違うところにもっていって、例えばこちらは何の気なしに近づいて、 ナイフには興味など全くないようにして、全く興味などないように近づいて、かかる。 相手が忘れた頃に
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