メス豚よばわり

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メス豚よばわり

「食事についてだ。まず、この肥え方からいくと、一日のカロリー限度を超えすぎだ。メス豚!!!」 メス豚なんて……噂に聞いていた毒舌王子ね。でも、私、この方についていくわ。メス豚呼ばわりすら快感よ。 「いいか、食べることは美を作る最大の方法であり、最も効果のある行為だ。筋肉を作ることも食べることが基本だ。いいな、お嬢様だからって容赦はしないぞ。どんなに大金つまれても生徒は生徒だ」 「食べる順番も大事だ。最初に野菜、魚や肉のあと、最後に炭水化物だぞ。とりあえずレシピのコピーを置いておく。これを参考にして、自分で作れ」 「だってうちにはお手伝いさんがいるしぃ」 「甘ったれるな!! 甘ったれた結果がこの贅肉満載の体だ。自力で作る、体を動かす習慣を作れよ」 「タンパク質をたっぷり? サプリでいいでしょ?」 「サプリは空腹をみたさねーだろ、その楽しようとする姿勢を1から鍛え直してやる。俺の指導は厳しいぞ、ついて来れるか?」 「はい、私、イケメンに弱いので」 はあ? という顔をして王子は運動について指導を始めた。 「んじゃ、運動について説明する。有酸素運動がダイエットには効果的だ。走ったり歩いたりっていうような持続的な運動のことだが、筋肉をつけていると太りにくい体質になる。体質改善はリバウンドを生みにくい体にするってことだ、よって筋肉をつけることは最重要課題でもある。運動の後にタンパク質を摂取するのが効果的だ」 わたしがうっとりしてイケメン王子をながめていると、けりをいれてくる。幼馴染みのような長年のつきあいのような錯覚になる。 「でかいケツあげろ、まずは初心者向けの有酸素運動だ、準備運動からするぞ」 その場でストレッチの見本を見せる王子の体はとても素敵だ。筋肉の引き締まりが理想的なのだ。まさに私の理想の王子様。私がうっとりしていると、 「おまえ、やる気あるのか? 途中で辞めても返金はしねーからな」 そんなことを言いつつ手取り足取りのレッスンは続く。もちろん、体に王子の手が触れることもあるが、あくまで指導の範囲だ。 2人っきりの有酸素運動は愛が芽生えそうで……しかし絶対に芽生えなさそうな予感しかしない。この男に恋愛感情などゼロなのだろう。 部屋にある大きな鏡を見ると私がおぼれそうな魚の顔をしていた。先生に芽生えるものは何もなさそうだった。いや、あんな顔を見て好きになる男性はいないだろう。私の顔は真っ赤になり、汗だくになり、非常に苦しい顔をしていたのだ。ひととおり終わった後に私は死んだ魚の目をしていたと思う。肥えた魚だ。
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