ユメの世界

2/10
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 ぼくたちの住む地下都市は、いつ頃にできたのだろう。  ぼくはあまり詳しく知らないのだが、今現在、地上世界に住むことは、ほとんど難しい状態であると、誰かに聞いたことがある。  なので人々は結託し、この地下都市を作り、住んでいるのだと言う。  けれども、まだ地上で生活をしている人間は比較的たくさんいて、ぼくたちはその人たちから、物資をもらい、生活を続けている。  ぼくたち地下都市でも、食料や、水の生産についての研究がされていたようだが、今は、それもストップされている。  なんでも地上の様子が大きく変化し、地上だけでなく、この地下都市に住むぼくたちを含めても、十分に生活できるだけの資源を地上から確保できるという理由からであった。  だからぼくたちは毎日、その地上行き列車から送られてくる物資をもらい、生活をしている。  基本的には缶詰とか、乾燥した比較的長持ちするものが送られてくるが、たまに生の野菜や、フルーツ、肉などが送られてくると、ぼくたちはそれを喜んで受け取る。  ぼくたちはユメの傘下にある一族、背の高い、そう、身長が2メートルくらいはある真っ黒な人型した、影のようなもの……正式な名前は知らないが、ぼくたちは彼らを「カゲ」と呼んでいる。そう、カゲが一軒一軒家をまわり、物資を配給してくれるのを楽しみに仕事に励んでいるのだ。  仕事といっても何をしているわけではない。この地下都市では、まずお金という概念が存在しない。  基本的に、都市の西側にある地上行列車がもたらす物資により生活が賄われているので、必要なものはすべて、その列車が運んでくれる。  だから、仕事は、いわば手すきの暇つぶしみたいなもので、たいていの人間は、地上で生業にしていた仕事をそのまま続けている。  何か壊れたものを修理したり、ちょっとしたものを運んだり。そういう時には、ささやかに、お礼としてもらった物資を分けることになっている。物々交換っていうのは、こういうことを言うんだろう。  ぼくはそういった技術がないので、そういう者達は、基本的に、地下都市の警備員として仕事をしている。  ぼくの仕事は、東側のゲートの管理。この地下都市の入口のひとつだ。といっても、この地下都市に入るには、この東側のゲートを通るか、西側の列車に乗るか、その二択しかない。  ゲートの管理といって、別にむずかしいわけでではない。ここを通るのは、常にユメの知り合いだけだからだ。  この東側のゲートを人間は通ることはできない。人間の移動は必ず、西側の列車で行われる。  ユメの友人たち?はその東側のパイプを通ってこの地下都市にやってくる。  ぼくたちは、そのやってきた友人たちに、恭しく頭を下げ、ユメのいる中央委員会へと案内する。というか、中央委員会まで、長い列を両脇に作り、その中を友人さんに通ってもらうといった感じだ。その先導はカゲたちが行ってくれ、ぼくたちはその友人のかたを視界に入れないようにとにかく頭を下げ続けるだけだった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!