ユメの世界

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 ゲートの前には、カゲよりもさらに大きいものが立っていた。人の形をしてているが、顔が、そう、ルー先生が昔教えてくれた、子供の落書きのような太陽、そんな頭をしたものが立っていた。 「ですから、ユメ様はお会いにならないと」  カゲたちは集まり、その太陽頭に、これ以上中に入らないようにと、説得しているようだった。  こんなことがあるのか。  そう、こんなことは初めてだった。いつもこのゲートを通るものたちは、完全にお客様扱いで、無駄に豪華に歓迎されることはあれど、ゲートの前で止められる、なんてことをぼくはみたことがなかった。  隣にいたやつに声をかけると、やはりそいつも同じようで、「こんなこともあるのか」と変に関心していた。 「ですから」  カゲたちの必死の抵抗もむなしく、その太陽頭はどんどんと、ゲートに入り込んでいく。  ぼくたちは、どうしたらいいのかわからない。いつものように列を作って中央委員会までの道を案内をすればいいのか、それとも、カゲを手伝って、この太陽頭を止めるべきなのか。 「ですから」  太陽頭はぐんぐんとゲートを進んで、やがて、中央委員会へと続く大通りを歩いていく。  ぼくたちは、いつもどおり、両側に列をつくり、その様子を見守ることにした。  カゲたちは必死に、太陽頭をこれ以上進めさせないために、抵抗するが、太陽頭はまるでカゲなんか存在していないかのように、気にも留めず、ずんずんと前に進んでいく。  ぼくたちはその様子をただ、列をなして見守っている。  初めてのことに、どうしたらいいのか、誰もわかっていなかった。しかし、一種のお祭りのようで、楽しみでもあった。  これから何が起こるんだろうな。  そうみな、口々に唱えていた。  やがて太陽頭が中央委員会へと到着する。  カゲたちは見るも無残に吹き飛ばされ、もう跡形も残っていない。  太陽頭がゆっくりと、中央委員会建物の中へ入っていく。  それから、どれくらいの時間がたっただろうか。ぼくたちは、先ほどの太陽頭と、ユメが高く高く、飛び去っていくの見た。  そして、この地下都市からユメは姿を消した。  一体どこへ行くのだろうか。  そうしてぼくたちと、ユメとの生活は終わりを告げた。
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