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ユメは、文字通り、ぼくたちに夢を与えてくれた。
列車はひとりでに動き出し、大量の物資を積んで帰ってくるようになった。
大量の物資が地下都市に浸透し、ぼくたちの生活は安定した。いや、安定を通り過ぎ、徐々に、豊かになっていった。
ぼくたちは何もしなくても生活できるようになった。人を殺さなくとも、仕事をしなくとも。
そして、ぼくたちは好きな時間に起きては、仕事という暇つぶしをするようになった。
ぼくはゲートの管理をし、ルー先生の家に向かう。
やがて列車のまわりに人々があつまってくる。
この列車はユメが来た時から、動きを止めているのだろう。
もう、ぼくたちの技術では直すことすらままならない。
そんな知識を持った人たちは、もうとっくに、とっくの昔に、死んでしまっているのだから。
ルー先生は、ルー先生はどうしているだろうか。
ぼくはその事実に気が付きながらも、ゆっくりと、ルー先生の家へと向かっていく。
その道中に、この地下都市から様々なものが消えていることに気がついた。
この地下都市にあるほとんどすべてのものは、ユメが、ぼくたちに与えたものなのだろう。
そのユメがいなくなった今、ユメからの様々な品も、共に姿を消したようだった。
なんだか、とても愉快だ。
なぜだか、ぼくはそんなことを思っていた。
やがて、ぼくはルー先生の家に着いた。
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