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「おぉーい、歌也」
「なーにー」
「この荷物も三階の奥の部屋に持って行ってくれー」
「えぇ~まだあるの?」
「まだあるよ。ほらほら頑張れ、バイト代弾むからさ」
「…もう」
(バイト代につられて力仕事に精を出すなんて我ながら情けない)
ハタチのうら若き乙女の休日がこんなんでいいのかと頭の中はモヤモヤでいっぱいだ。
(っていうかこの荷物の主は何処にいるのだ)
先刻から運ばれて来る荷物は父の手から受け取るばかりで肝心の引っ越しの主が顔を出していなかった。
(はぁ……先が思いやられる)
私は高科歌也。20歳のごくごく平凡な女子大生。
しかしこんな平凡な私の家庭環境はちょっと平凡ではなかった。
『歌也、ちょっと』
「もう何よ、ちょっと待って!」
三階に上がったばかりの私を一階から呼ぶ父は人使いが荒い。
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