207人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
『りゅうっておひめさまみたい』
『おひめ、さま?』
『いいなぁ~かやだっておひめさまになりたいのに…。でもなっちゃいけないんだもん』
『どうして?』
『だってパパがおひめさまになりたいんだって。だからかやがなっちゃいけないの』
『? パパがおひめさま…なの?』
『そう。パパ、かわいそうなの。おひめさまになりたいのにおとこのこだからなれないんだって』
『……』
『かやはパパがあこがれているおんなのこだから……だからおひめさまになりたいなんていっちゃだめなの』
『どうして?』
『だーかーらー、もう、りゅうはバカだね! おんなのこにうまれたってだけでかやはまんぞくしなきゃいけないの!』
『……よくわからない』
『わからなくていいよ、りゅうバカだもん』
『……じゃあぼくがかやちゃんをおひめさまにしてあげる』
『はぁ? なにいってんの? おひめさまになるにはおうじさまがいなくっちゃダメなんだよ』
『じゃあぼく、おうじさまになる』
『りゅうが? おうじさま?』
『うん。おうじさまになってかやちゃんをおひめさまにしてあげる』
『……』
『ね、やくそく』
『バ、バッカじゃないの! おうじさまってね、かっこよくてクールでせがたかくなくっちゃいけないんだよ』
『かっこよくて……くーる?』
『そんなこともしらないおこちゃまがおうじさまになんてなれるわけないんだからぁ』
『じゃあぼくがおうじさまになったらかやちゃん、ぼくのおひめさまになってね』
『……なれるもんならなってみなさいよ、それでかやをむかえにきておひめさまにするの、いい?』
『うん、やくそく』
『やくそく』
昔々のあの日……たった一日だけ遊んだ男の子と約束を交わした。
最初のコメントを投稿しよう!