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涙の卒業証書
あの日の出会いからあっという間の三年間だった。私の中で育ってしまった恋心は、どこにも行けず燻ったまま卒業式がやってきた。
卒業式の後、校門付近で写真を撮りあう同級生の輪には、何となく入れずにいた。
写真撮影のグループや、ネクタイ交換やボタン争奪戦を遠目に、自然と足はみんながいるところとは反対側の校舎横へと向いていた。
お別れをするなら、やはりこの木の下だった。ひんやりと冷たい空気の中、蕾はまだ硬く、立派な枝だけの桜の姿を見ると、寂しさがつのる。
まだ花が咲くのは遠いけれど、私の脳裏にはあの日の桜が舞っていた。
「まだ咲かないな。」
いつの間にか島本先生がすぐ後ろにいて、聞き慣れた低音の声が耳に響いた。
「そう、ですね…。」
先生もあの日のあの桜を思い出してくれているのだろうか?そう思った矢先だった。
「あの日、可愛かったな、花びらをいっぱい頭に乗せて。」
――何で、今、そんな事……。
卒業式の間でさえ我慢出来ていた涙が、ポロポロとこぼれた。
「これ、いるか?」
先生の手の中には深緑色のネクタイ。それって……。
「この間、実家に帰ったらさ、母親がまだ制服残してて。ボタンはなかったけど、これはあったから。」
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