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桜の木の下で
瀟洒な鉄製の門扉は既に開かれていて、門柱には入学式の立て看板が出されている。気が急いて、一緒に出る予定だった両親を置いて、かなり早くに家を出てしまった。校門の付近には私と同じ新入生らしき姿はまだ数える程だった。
広い敷地に建てられた校舎は、ヨーロッパのレンガ造りを模したもので、重厚な雰囲気はそれだけで自分が一気に成長したかのように感じられる。今日からここで三年間を過ごすのだと思うと、何もかもが輝いているように思えた。
まだ慣れない制服はタータンチェックのスカートに紺のブレザー、胸には金色の刺繍でSの飾り文字と至ってシンプル、今時ありふれた制服だけれど、首元の深緑色で先端に白いラインが入ったネクタイが“桜ヶ丘学院”の証しだ。男女で幅こそ少し違うものの、シンボルカラーの深緑のネクタイをしていれば、「あのガクインの生徒なのね」とこの辺りでは一目置かれる。
そうやって自分自身も憧れていた制服を身につけているという高揚感は何とも言えなかった。
ネクタイが歪んでいないかもう一度確かめながら向かった先は、クラス割りが発表されている掲示板ではなく、校舎横の桜の木だった。
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