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サンタさんにお願い(5)おねがい
安積も恭子も犯行を素直に認め、供述した。安積の部屋から押収したものの中には、今回の呪殺以外の呪殺の証拠品が残されていた。
安積の供述によると、呪殺を頼んでおきながら料金を踏み倒したりする輩への保険や、呪殺屋としてやっていけなくなった時に脅迫しようと思って、依頼の証拠を残して来たらしい。
恭子は夫を事故で無くした後、母子で暮らしていたが、恋人ができた。しかし、出かけるにも再婚にも子供が邪魔になっていた時、呪殺屋に呪殺を依頼する事ができ、迷わず頼んだと供述した。
呪殺屋は、依頼者になりそうな人間をネットの掲示板から見付けたり、児童相談所や探偵事務所に式神を忍ばせて情報を取って探していたらしい。
陽斗君は死んでしまったが、事件はどうにか解決できた。
皮肉な事に、終わった日はクリスマスイブだった。
毎年の如く、神様、兄達、京香さん達、徳川さんも一緒にクリスマス会だ。
夜のうちに仕込んでおいたものを帰って来てから仕上げたり、美里や冴子姉、千穂さんや京香さんに頼んでおいた料理やケーキは評判も上々だ。
中に番号を書いた紙を入れておいたクッキーでチーム分けをしてゲームをしたり、子供達も遅くまではしゃぎ、電池が切れるようにしてパタンと眠りについた。
それを見届け、大人と神様達で飲み直すのもいつもの事だ。
「何の夢を見ているんだろうな。随分楽しそうな顔をしている」
照姉こと天照大御神が言い、クスクスと大人達は笑った。
「康介は春から高校生、敬も中学生か。早いもんだ」
しみじみと騰蛇が言えば、天空は
「ついこの間まで、甘えてくれてたのにぃ」
と口を尖らせた。
イエスも山の神も暖かな笑みを浮かべ、
「人の時間は、我々よりも早いから」
と静かに言って盃を傾ける。
僕と直は、その言葉を複雑な思いで聞いていた。
半分ヒトでなくなった僕達は、死んだ後の再就職先が神に決まっている。あと何回、こうしてクリスマスを過ごせるのか、何年一緒に生きられるのかわからない。
その事は兄にも言えない。
「なあに。すぐにあの子達の子供の相手ができるようになるし、その前には、あの子達とこうして一緒に飲めるようになるってもんだ」
照姉がそう言ってグラスを掲げ、
「改めて、子供達の成長とこの人間達の平穏に」
と言い、皆でグラスを掲げる。
「乾杯」
そして、続ける。
「お誕生日おめでとう」
我が家では、クリスマス会は「イエスのおじちゃんのお誕生日会」でもあり、毎年乾杯はこの2つを言う。
そんな優しさと真っすぐさを失わずに、成長して欲しい。
「それより、なあ。あれ、自転車のヘルメットなんだろ?」
朱雀が凜のヘルメットを指し、皆がそれを見る。
結局凜の決意は変わらず、安全第一になった。
まあ、これも悪くない。だが、念の為に色んなデザインのカバーも用意した。
「面白いじゃないか」
十二神将達はそれらを眺め、今度は揉めだした。
「明日」
「喜ぶぞ」
「じゃあ、白虎で」
「安全性重視で亀だな」
「男の子だろ。鳥で飛ぶのも喜ぶに違いない」
「竜も人気だそうだぞ、アニメとかゲームとか見てると」
「ちょっと待てお前ら。何の相談だ」
割って入ると、彼らはケロリとして言った。
「凜を乗せてちょっと散歩」
直がワインを噴いた。
「あ、ほかの子も乗せてやろう。ヘルメットはあるんだろ、累も敬も康介も優維も」
「あるけどな!その辺を虎とか竜とか走り回ったらパニックになるだろう」
「……見えないように隠蔽しながらする」
「いや、普通に自転車に付き合ってくれれば喜ぶからな。それで頼むよ」
それで彼らは渋々納得したが、京香さんや冴子姉などは、乗ってみたいなどと呟いていた。聞かなかった事にしよう。
そう思って、直と新しい飲み物を取りに立つ。
するとそこに照姉が来て、にっこりとしながら小声で言った。
「年が明けて新年のバタバタが収まったら、また新しい研修を始めるぞ。パワーアップというやつだな。
それと小野からの伝言だ。元日は初日の出を見ようとして山とかに行く人間が増え、そこに留まっていたヤツを不用意に接触して刺激しかねない。だから、それらしいところはあらかじめ見回っておいてくれだとさ。
この日本酒は持って行ってやろう」
追加にと日本酒やビールを冷蔵庫から出していたら、それを持って照姉はテーブルへと戻って行った。
それを僕と直は呆然と見送り、呟く。
「研修?え、これ以上の新体質かねえ?それに、見回りのお願い?」
「ああ、面倒臭いなあ」
まだ楽はできないらしい。僕と直は顔を見合わせ、苦笑を浮かべた。
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