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「あー、これ?」
知花くんは、ポケットからネクタイを引き抜いて、目の前に掲げる。
綺麗に折りたたんでいるから、幸いなことに変なシワは付いていないみたい。
「俺、ネクタイ結べないんだよね」
「えっ、嘘……」
「嘘じゃなくて」
「だって、式典の時とかはちゃんとネクタイ結んでたじゃない」
「あの時は、友達にやってもらってたから。てか、よく知ってんね。そんなに俺のこと見てんの?」
「み、見てない……」
否定をしても、真っ赤な顔で言っている時点で説得力はないだろうけど。
嘘。本当は、見てる。
知花くんは、どこにいてもすぐ見つけてしまうから。
「ふーん。俺は、いつも見てるけど。雛子のこと」
「……」
知花くんが首をかしげて不思議そうに私の顔をみているのは、私が真っ赤な顔のままで頬を膨らませたから。
「知花くん、いつもそれ、わざとなの?」
「それって何?」
「もういい……」
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