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「会長とか何……。敬語だし」
いつまで生徒会の夢を見てるんだか。
ふたりでここにいるはずなのに、ひとりきりになったみたいで寂しい。
「あれ?あ、夢見てた。昔の」
昔の……夢?
それなら、私を見て会長って呼ぶってことは、あの寝言も今の生徒会長じゃなくて……。
「何?昔の夢って。私が出てたってこと?」
「うん」
それはつまり、私の夢を……?
夢の中まで一緒だった。せっかくその事実に感動しかけたところだったのに、
「ピンクのブラ付けてたよ、会長」
それを全て台無しにする余計なひと言に、寝起きの頭にバチンと一発食らわせてしまった。
夢の中の私に何してるんだ、この人。
というか、さっきからその呼び方は、すごくムズムズする。
そう思えるほど、彼に「雛子」と呼ばれることは自然なことになっていたんだ。
「いつまでも会長とか呼ばないでよ」
「そっちだって、ずっと知花くんって呼ぶじゃん」
「う、うう……」
本当は眠っている時にこっそりと呼んでましたとは言えず、私は唸るばかり。
名前を呼ぼうとするだけで、恥ずかしくてどうしようもなくなるなんて。
「雛子」
そんな私を見てクスッと笑った知花くんは、大きな手のひらで私の頬に触れる。
「夢の中より可愛い」
やわらかく笑う顔が、こちらを見つめる。
「俺に恋してる顔が、一番可愛い」
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