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5章 ティッチィの混乱
ふさふさとした慣れない手触りを感じて、ティッチィは目を覚ました。ぱちぱちと瞬きを繰り返して、あれ、という小さな違和感を覚える。ティッチィは目を閉じる前の、最後に見た光景を思い出していった。すると、やはりおかしい。天井の見え方が違っている。ティッチィが天井に見つけた、三回転ほど大きく捻れ曲がった珍しい枝の姿が見えないのだ。決定的だったのは、ティッチィの体の下に敷かれた毛皮だった。葉とは比べ物にならないほどの温もりをもたらすそれは、本来ティッチィの寝床には無いはずのものだ。
昨夜、ポルテの腕にしがみついて眠ったという記憶は、ティッチィの脳からきれいに消えてなくなっていた。ティッチィは、ポルテがわざわざこの寝床まで運んでくれたのだろうかと考えた。しかし体を起こし、ポルテが眠っているはずの寝床を見て、そんな些細な疑問は吹き飛んでしまった。ティッチィにとって、それは樹木をへし折らんばかりの強風の様な衝撃だった。
ポルテがいないのだ。
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