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1章 早朝の報せ
アレイメは鼻の頭をくすぐる凛とした空気で目を覚ました。薄目を開けると、ぼんやりとした視界に枝組みの天井が見えた。光はまだ射しこんでおらず、うす暗い。冷たくも優しい朝の吐息は、その身をぴりっと引き締めてくれる気持ちの良いものである。けれど何ごとにも良い面と悪い面があるもので、覚醒と微睡の狭間にいるアレイメにとって、どちらかというとそれは邪魔としか感じられなかった。
アレイメはがさがさという音を立てて寝返りを打った。アレイメが欲したのは身を引き締めてくれる厳しさより、自らを温めて、甘えさせてくれる優しさだった。けれど葉が生い茂った大枝で作られた寝具は、どれだけ強く身に寄せてもあまり温かくなってくれない。それでも足を畳んで体を丸く縮めると、さきほどよりも幾らかは温かくなったように感じられた。アレイメはそれに満足し、朝日が昇るまでのわずかな時間、微睡の霧の中へと意識を沈めるのだった。
小さな振動を感じて、アレイメの意識は闇色の空間から浮上した。アレイメは横になったまま、片耳を床につけた。こつこつ、という小さな音が、葉を敷き詰めた床からアレイメの耳に伝う。アレイメは顔を起こした。アレイメの住み家には一つの小窓があって、夜の間はそれに大きな葉を何枚か重ねて閉ざしている。葉の向こうに光が見えた。
アレイメは鈍重な動きで枝葉の寝具から抜け出すと、家の床から天井までを貫いている太い幹の側へ向かった。分厚い革に覆われた逞しい幹の側には、多くの葉がついた枝が置かれていて、アレイメはそれを手に持ってどかした。覆われていた穴が顔を覗かせる。アレイメが二人は入れそうな大きな穴である。アレイメは穴の側に膝を下ろして、そこから下をのぞき込んだ。幹にしがみついた同族と目が合った。同族は女で、アレイメへの報告役を担っている。
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