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ティッチィは堪えられなくなり、思考の世界から舞い戻った。
そんなはずはない、と、ティッチィは激しく暴れまわる胸の中の何かに言い聞かせる。しかし、胸の中の何かもまた学習しているようで、ティッチィのそんなはずはない、は大してあてにならないと知っていた。ばくん、ばくん、と、胸の中の何かはさらに鼓動の音を激しくする。
ティッチィの頭の中を、幾つもの「どうしよう」が駆け巡った。
そんな時である。
家の入り口の枝葉が大きな音を立てて震えた。ティッチィは枝葉の悪戯にまんまと引っ掛かったようにびくっと体を震わせた。それによってティッチィの思考は一時的に途切れ、彼女は無意識に従って動いた。
ティッチィはすぐさまポルテの寝床にある毛皮を捲りあげ、その下に敷かれた柔らかな葉の中に身を埋めた。体を隠すように葉をかき集め、その上から毛皮を被った。
ティッチィが身を隠し終えたその時、枝葉は完全にどかされ、温かな光に先導される形で誰かが家に入ってきた。葉に埋もれ、毛皮で視界を遮られているティッチィは、それが誰なのか分からない。
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