あそぼー

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あそぼー

「あ、晩メシの支度してんの?手伝おうか」 台所に立つ有村の横に行った工藤は、作業台に手をついて軽く身を預けてるその様もすげぇ絵になってた。さすがモデル…… そのまま有村とはっきりとは聞き取れない声でぼそぼそやり取りして料理を手伝い始めて、それもなんかすげぇいい雰囲気でさ。別にイチャイチャしてるわけでもねえのに。 さっきのことを怒ってんのか気にしてねえのか汲み取りにくい静かな表情の有村。その隣で包丁を扱いながら何かを話してる工藤。 見た目は全然違うのに、どこか似てる。カップルとか夫婦とかは似てくるっていうけど、それなのかな。 「ね。お似合いでしょ…」 いつの間にか隣に来てた真紘が俺の耳元でヒソヒソ言って、反射的に振り向いたら綺麗な顔が思わぬ近さにあって、俺はびっくりして身を引いた。 「何、その反応!失礼しちゃうなー!」 「近ェよ。距離感バカだろ」 「バカじゃないもんっ!」 どきどきしたのを隠そうとしてつい乱暴な物言いになった。ったく…なんなんだよ…… 「ねーねー雪ちゃん、パズドラしよーよ。ごはんが出来るまで」 真紘はまた唐突に話を変えてスマホを取り出しながらにこにこした。 「やったことねえよ」 「えーー!!まじで!?この国民的人気ゲームを!?」 俺の隣の椅子に腰かけて来ながら本気で驚く真紘に、カウンターの向こうの有村が、 「本庄、こいつスマホに入ってるだけで一向に上達しないから、すぐ追いつけるよ」 と意地悪く笑う。 「上達したよ!この間3コンボしたもん!」 「お話にならないね」 「りっちゃんはゲーマーだもん、一緒にしたらダメだかんね!」 ブツブツ言いながら俺の方に手を出してきて。 「何?」 「スマホかして?ダウンロードしたげるから、あそぼ?」 「やらねえよ。時間の無駄」 真紘はテーブルにべしゃっと潰れて、つまんないよーとか寂しいよーとかぼやいて、伸ばした両手でスマホを立てて持って噂のパズドラとやらをやり始めた。 見慣れないそれを横から覗いてたら、しばらくして、チラリと俺を上目遣いに見た真紘の黒目勝ちの瞳が嬉しそうにきらきらしてさ…… 「やりたくなった?」 ってなんか年上のはずなのに今は離れて暮らしてる弟を思い出して……「ちょっとな」って答えると、たちまち起き上った真紘は俺のスマホを取り上げてパズドラをダウンロード。そりゃあ生き生きと遊び方を説明してくれた。
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