自己紹介

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自己紹介

「痛いよりっちゃん……可愛いイトコにこんな仕打ち、ひど~い」 「何が可愛い、だ。自分で言うな」 「冷たい……まーちゃん悲しい…… あ、そういやお腹空いてんの。りっちゃんご飯ちょーだい」 「薄っぺらだよね、お前の悲しみは……」 有村はまた一つ大きなため息をついて俺に目を向けると、 「ごめんな、お前もう起きる?起きるんだったらこのバカと一緒に朝飯でもいい?」 そう言って顎でイトコを指した。 「いいよ。起きる」 「ん。じゃあ着替えたら出といで」 有村がそう言い残してドアを閉めるその間際、後ろからイトコがにこっと笑って小さく手を振ってた。 ヘンなヤツ。けど……なんか垢ぬけてて綺麗。それもそのはず、だった。着替えて出てった俺がダイニングの席に着くと、イトコが勝手に自己紹介しだしてさ。 「桐ヶ谷(きりがや)真紘(まひろ)24歳、りっちゃんのイトコで~す!モデルやってま~す!売れっ子になる5秒前だよ!よろしくね!サインいる?」 にこにこにこにこご機嫌でさ。うるせぇけど、なんか憎めない感じで。 「いらねぇ」 俺がそう言ったら、「えー!ちょーショックー!」って顔を両手で覆って、次の瞬間には、「君は?なんていうの?」ってまた笑顔で。 「本庄雪平」 「うんうん。で?」 「で、って言われても。高校は知ってるだろ。あんたのイトコがセンセーやってるトコ。そこの3年。そんだけ」 「ふーーーん」 黒目勝ちの目を好奇心できらきらさせて俺をじっと見てきて……次には、 「りっちゃんのガッコーかしこいとこだったよね?こーゆー子もいるんだねえ…」 とかって……聞き捨てならねえ言い方をしやがった。 「どういう意味だよ…」 「ん?だってヤンキーみたいだもん」 ずばっと歯に衣着せぬってヤツ……まぁ自覚あるよ。かなり明るい茶髪も、鋭い眉も、今、耳のは外してるけどヘソのピアスはしてるし? けど「こーゆー子」ってのは気に入らねぇ。そう思って反撃しようとしたら── 「でも!ヤンキーでかしこいってなんかかっこいいね!」 にこっと言ったその言葉に出鼻をくじかれる。どうやらまったく悪気がないらしい。 「本庄……まともに相手にしてたらバカがうつるよ」 有村の皮肉っぽい笑み。 「うつらない~~!」 「反論はそこなわけ?」 目の前の大人二人のバカげたやり取りに、なんか俺も毒気を抜かれて笑ってた。
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