512人が本棚に入れています
本棚に追加
自己紹介
「痛いよりっちゃん……可愛いイトコにこんな仕打ち、ひど~い」
「何が可愛い、だ。自分で言うな」
「冷たい……まーちゃん悲しい……
あ、そういやお腹空いてんの。りっちゃんご飯ちょーだい」
「薄っぺらだよね、お前の悲しみは……」
有村はまた一つ大きなため息をついて俺に目を向けると、
「ごめんな、お前もう起きる?起きるんだったらこのバカと一緒に朝飯でもいい?」
そう言って顎でイトコを指した。
「いいよ。起きる」
「ん。じゃあ着替えたら出といで」
有村がそう言い残してドアを閉めるその間際、後ろからイトコがにこっと笑って小さく手を振ってた。
ヘンなヤツ。けど……なんか垢ぬけてて綺麗。それもそのはず、だった。着替えて出てった俺がダイニングの席に着くと、イトコが勝手に自己紹介しだしてさ。
「桐ヶ谷真紘24歳、りっちゃんのイトコで~す!モデルやってま~す!売れっ子になる5秒前だよ!よろしくね!サインいる?」
にこにこにこにこご機嫌でさ。うるせぇけど、なんか憎めない感じで。
「いらねぇ」
俺がそう言ったら、「えー!ちょーショックー!」って顔を両手で覆って、次の瞬間には、「君は?なんていうの?」ってまた笑顔で。
「本庄雪平」
「うんうん。で?」
「で、って言われても。高校は知ってるだろ。あんたのイトコがセンセーやってるトコ。そこの3年。そんだけ」
「ふーーーん」
黒目勝ちの目を好奇心できらきらさせて俺をじっと見てきて……次には、
「りっちゃんのガッコーかしこいとこだったよね?こーゆー子もいるんだねえ…」
とかって……聞き捨てならねえ言い方をしやがった。
「どういう意味だよ…」
「ん?だってヤンキーみたいだもん」
ずばっと歯に衣着せぬってヤツ……まぁ自覚あるよ。かなり明るい茶髪も、鋭い眉も、今、耳のは外してるけどヘソのピアスはしてるし?
けど「こーゆー子」ってのは気に入らねぇ。そう思って反撃しようとしたら──
「でも!ヤンキーでかしこいってなんかかっこいいね!」
にこっと言ったその言葉に出鼻をくじかれる。どうやらまったく悪気がないらしい。
「本庄……まともに相手にしてたらバカがうつるよ」
有村の皮肉っぽい笑み。
「うつらない~~!」
「反論はそこなわけ?」
目の前の大人二人のバカげたやり取りに、なんか俺も毒気を抜かれて笑ってた。
最初のコメントを投稿しよう!