28歳成人男子

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28歳成人男子

「言っとくけど本庄のはドレスコード、ギリだからね。成績がいつも上位10位以内に入ってるから大目に見てもらってんだから」 有村の用意した飯を食いながら、何度となく言われた小言を右から左に流す。 「カラーはOKなんだからいいじゃん」 「カッコ明るすぎない事っていう注意書きがあるでしょ」 「そんな主観に頼った校則作る方が悪ィんだよ」 「そーだそーだぁ!雪ちゃんが正し~い!」 ウインナーをぶっ刺したフォークを元気よく上へ振り上げた桐ヶ谷サンが言うのに、「なに馴れ馴れしく呼んでんだよ」と睨んでやったら、 「いーじゃん!ね?俺のことは真紘でいいよ!あ、まーちゃんでもいいよ?」 「誰が呼ぶか」 「雪ちゃん、初対面なのにかなり失礼だよね?俺の方がお兄ちゃんなのに」 同意を求めて真紘が有村の方を向くと、「あんたにだけは言われたくないよね」と、有村に軽く流されてた。 ヘンなの。すげーヘンな空間だ。 日曜の早朝、ガッコーの先生とそのいとこのモデルと飯食ってる。先生んチで。 「あー美味しかった!りっちゃんごちそーさま!」 真紘が立ち上がって、食い終わって重ねてた俺の食器も一緒に流しに運んでくれる。 「あざっす」 余りに自然なそれに素直に頭を下げると、そのまま食器を洗い始めた真紘が「ねえねえ雪ちゃん、今日どこ行く~?」ってカウンター越しに訊いてきた。 「は?」 その疑問の声は、俺と有村の。 「何言ってんのあんた」 有村が遅れて食事を終えて立ち上がり呆れた顔をすると、「ふっふっふ……」とわざとらしい笑い方をした真紘がキラーンって言葉がぴったりの目つきで有村を見返した。 「何を隠そう!今日の俺は(けい)ちゃんから放たれた刺客!」 真紘がそう言うと、有村がゲッて顔をして…… 「こら、ちょっとあんた何を言い出し……」 「今日のデートの約束、ドタキャンされた!って怒ってたよ?螢ちゃん。だからぁ~俺が代わりに雪ちゃん見たげるから!ね?いってらっしゃ~い」 顔を片手で覆って俯いた有村の、ため息ついてる耳の縁がすげぇ赤い。 「へー……先生、彼女いるんだ」 「ううん、彼女じゃな──」 「いるんです!ええ、いるんです!男、有村(ありむら)理人(りひと)(よわい)28とくりゃいるでしょ恋人くらい!分かってるだろうけど学校で言うなよ!」 開き直ったのか、真紘が彼女じゃないって否定しかけたのを肯定した有村は、俺にそう言って釘を刺した。
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